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zoom RSS ジプシーを巡る旅(こぼれ噺〜ジプシーとの旅)

<<   作成日時 : 2008/04/22 23:23   >>

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画像今日は「こぼれ噺」ということで軽めの話題を。
それと以前予告していたとおり、2月に書きかけのまま終了できなかった前回のシーラーズへの旅日記を補足する意味も含め、ふたりのザルギャルと巡ったシーラーズの旅の記録を写真と共に記したいと思います。というわけで、今日の話題は直接的にはジプシー取材とは関係ありませんのでご了承を。

関口さんがテヘラン入りされた次の日、私たちはまずアリレザ ザルギャルの家を訪問し、軽い打ち合わを済ませザルギャルに関するレクチャーを再度受けた後、表敬訪問の意を込めテヘラン郊外に位置するヌスラット宅を訪れます。2年少し前にヌスラット宅を訪れていた関口さんは、アリレザの運転する車が目的地へ近付くにつれ、懐かしさを覚えらた様子。私にとっては勿論初めての訪問。しかし、関口さんが撮影されたヌスラット宅での饗宴の模様を過去3度に渡り観ていたので、不思議な既視感を覚えました。畑を含む広大な裏庭を抱えたヌスラット宅は、彼の裕福さを窺わせました。前にも書いたとおり、ヌスラットは地主でもあるわけです。
全体的に天井が高い一軒家。天井の一部が明り取りのガラス張りとなっていて、昼間は照明がなくとも、気持ちの良い光りが部屋全体を満たしていました。リビングがやたら広くてそれ以外の部屋が小ぶりという典型的なイランの住居の構造。そのリビング部分には、イマーム・アリやルーミーの肖像画がところ狭しと飾られていました。
関口さんがまず驚かれたことには、2年前には存在しなかった髭が、ヌスラットの顎を覆っていたこと(ご興味がある方は、『アラブ・ミュージック その深遠なる魅力に迫る』に2年前のヌスラットの写真が載ってますよ)。何でも、彼は「ダルヴィーシュになった」のだとか(笑)。言い方を変えれば、スーフィーの世界にすっかりかぶれてしまったということ。というのも、先日の日記で書いたとおり、ルーミー生誕800年祭でトルコのコンヤに呼ばれ演奏をして以来、もともと大好きだったルーミーの詩が輪を掛けて好きになり、自らの芸術活動の上で何かにつけてルーミーにインスパイアされるようになったらしい。私たちが家に到着した途端、ヌスラットのビデオカメラで撮影した膨大なテープコレクションの中から「傑作選」の上映会が始まったわけですが、その中には西アゼルバイジャン地方に位置する都市・ホイを訪れ、ルーミーの精神的道師であるシャムセ・タブリーズィーの眠る廟の前でにこやかに微笑むヌスラットの映像も含まれていました。ヌスラットの映像コレクションの話は、おもしろいのでこの後も折に触れて旅日記に書いていきたいと思います。
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その翌々日、いよいよ最初の調査目的地シーラーズへ向け、私たちはテヘランの空港から出発することになります。
朝9時に空港で待ち合わせをした私たちは、ヌスラットの表情がいくらか曇っていることに気付きます。それは、彼が持参したマイ・チョグールが、空港入り口のX線検査を通す際、コンベアーから滑り落ちてボディにひびが入ったため。この事件はこれ以降旅の間中、常にヌスラットの気掛かりの種となります。ミュージシャンにとって楽器は命。こちらまで気の毒になった事件でした。

何はともあれ、無事に4人揃い、30年以上前(つまりイラン革命前)に造られたボーイング機に乗り込んだ私たち。イランの飛行機の機体の古さについては散々このブログでは述べて来ていますので、今回は述べません。
いよいよ「ジプシー」との旅が始まります。関口さんは、これまでジプシーたちと車での旅をしたことはあったそうですが、飛行機での旅はこれが初めてとのこと。その旨をふたりのザルギャルに伝えたところ、これ以降、「ジプシーと一緒の旅はどうだ?」が、アリレザの口癖になりました。ヌスラットもこの台詞を随分気に入った様子。折に触れ、ジョークめかして「ジプシーとの旅はどうだ?」を連発することに。自らを「ジプシー」と呼称して憚らないところや、自らがジプシーであることを冗談めかして口にできる余裕からも、彼らがやはり異色の「ジプシー」であることが窺えると、関口さんは言っていました。
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さて、シーラーズの空港に到着した私たちを迎えてくれたのは、ザルギャル・ファミリーと家族関係にあるひとりのガシュガーイー族の青年でした。ガシュガーイーについて、またガシュガーイーとザルギャルの関係は、後の日記で簡単に述べることになるかと思いますが、とにもかくにも以降シーラーズの旅は、この青年に随分お世話になることに。

しかし、シーラーズに着いたその日から、私たちは彼らの行動に随分悩まされることとなります。
限られた取材期間。それをなるべく有効に使えるようにと、私はテヘラン→シーラーズの飛行機の便をなるべく朝早い時間に指定していました。しかし、初春とは言え当時すでに初夏のような陽気になっていたシーラーズでは、昼間は休み夕方になって行動を開始するという「地中海式生活パターン」にはまり込みます。というわけで、現地入りした一日目は昼食の後ホテルで休み、夕方から行動開始。まあそれは仕方のないこととして理解できます。それ自体には何の問題もありませんでした。しかし、その行動の内容に問題があったのです。
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体よくザルギャル・ファミリーの親戚巡りと観光旅行に私たちは利用されてしまったんじゃないか?、そう疑問を抱いてしまうような出来事が、シーラーズ滞在中、幾度となく起こりました。もちろん、ストイックに調査だけを行うのは不可能だとは思います。特にイランのように、家族親戚付き合いに重点を置く国では、いわゆる親戚巡りから得られる成果も多分にあるはず。実際に彼らの親戚の多くから、随分刺激的な話をたくさん聞き出せたし、彼らが日々最高のご馳走と気遣いでもてなしてくれていることも痛いほどに感じられました。ヌスラットという、ザルギャル一族の長とも言えるような重要人物のシーラーズ訪問というのも、最高のもてなしの根底にあったかとは思いますが、一般的に「イラン人」の客をもてなす精神は、閉口させられるほど過剰であることがしばしば。ちなみに、シーラーズ滞在中の日課を書くと、到着した日は、昼間:昼食後休む、夜:市内観光、翌日からは午前中:観光、昼間:親戚宅での昼食後、お喋り→お茶→お昼寝といった、なんともグータラな調子。
しかし先日も書いたとおり、「もうダメだ〜!」と思った瞬間、「夕方〜夜→調査にとって何か重要な出来事が起こる(降ってくる)」というパターンを繰り返したのでした。

何はともあれ、今日は「こぼれ噺」ですので、ザルギャルとの旅(観光)について軽く記して〆にします。
到着日の夜は、有名なヴァキール・バーザールを始め、シーラーズの観光名所巡りをします。詳しくは、写真のキャプション↓を参考にしてください。
2日目朝は、ヌスラットの強い希望により、ハーフェズ廟の訪問、そして廟でのチョグール演奏を決行します。
このハーフェズ廟については、一般の観光情報としてぜひに記しておきたいことがあるんです。
ハーフェズ廟を訪れたのは、私にとってこの時2回目だったわけですが、廟の周囲は常に見学の小学生〜高校生で溢れ帰っています。そして、外国人観光客は、漏れなく彼らの好奇心を満たすためのターゲットとなります。
特に、去年『チャングムの誓い』(イランでは『ヤンゴン』というタイトル)がテレビで放映され一大ブームとなったイランでは、東洋人の女性はとにかくすごい人気!テヘランでも「ヤンゴン・ヤンゴン」と声を掛けられることはしばしばですが、ハーフェズ廟では、サイン攻めに逢う上、記念撮影の嵐に遭遇します。そのすさまじさと言ったら半端ではない。もう、自分自身が「取り合い」の対象となるのは確実。スター☆気分を味わいたかったらぜひハーフェズ廟の訪問をおススメいたします。(慶九さんとりーずさんもサイン攻めに逢ったって言ってたな・・・)。そして、人気のもうひとつの理由として、学校で習った英語の成果を外国人相手に試してみたい、そういった動機も多分に見られます。おもしろいのは、女性は女子生徒たちに、男性は男子生徒たちに囲まれる・・・というなんとなくの暗黙の了解が出来あがっていること、でしょうか。
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学生や子供達に囲まれ「人気者」になっている私たちには目もくれず、ヌスラットは既に自分の世界に入っていました。周囲の喧騒を他所にハーフェズの墓石に額づき、立ち上がろうとしないヌスラット。子供達はおもしろがってヌスラットの写真撮影も開始。しかしヌスラットたるや、一旦自分の中でスイッチが入ると、完全に自分の世界に入ってしまうのです。詩人の廟巡りもさることながら、タクシーでの移動中、眠っていたかと思うと突然歌い出したりとか、ザルギャル・ファミリーが自らのルーツについて熱い議論を戦わせている最中、瞑想状態に入っていたかと思うと突然スイッチがオンになり、詳細な家系図を大声で熱く語り始めたりとか。従弟のアリレザはこのヌスラットの天然っぷりには常日頃のことで慣れっこの様子でしたが、私はヌスラットの醸しだす世界観が可笑しくて可笑しくて、彼が何かやらかす度に笑い出す始末でした。それに妙に人懐っこいというかお人よしなところもあって、旅の最中彼の希望に随分振り回されもしたけれど、すごく気を遣ってくれている(かなりピントがズレた気遣いではあったけれど・笑)ヌスラットの優しさにも、ふとした瞬間に気付かされたのでした。
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次回は肝心のシーラーズでの調査について記します。

写真1:ハーフェズの墓石に額づき、愛おしそうに頬ずりして離れないヌスラット。
写真2:シーラーズのバーザール。1月の旅の際、撮影。
写真3:バーザールの中庭にて。1月に訪れた際には、オレンジの実がたわわに実っていた。
写真4:バーザールのアンティーク・ショップにて、鷲の形の置物が非常にお気に召したヌスラット。一瞬、勢いで購入!という事態になりかけたが、あまりの高額さにしぶしぶ諦めモード。しかし、この置きものにどうしても後ろ髪引かれるヌスラットは、この後、自ら持参したビデオカメラで置物の「静物」画を記録し始める。この静物画も、シーラーズの旅の記録として今頃彼の映像コレクションに加えられていることだろう(笑)。
写真5:ハーフェズ廟で見学の子供達に囲まれ、スターになった関口氏。
写真6:ハーフェズ廟の入り口付近にて、「ハーフェズ占い(これについては『地球散歩』を参照してください)」を売る男性。お金を支払うと、インコの嘴で占いの紙片をピックアップする仕組み。こちらも1月の訪問の際に撮影。

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コメント(7件)

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まま、しょうがない。と、人事だからいえます(笑)
ずいぶん気をもまれたでしょうね〜
お察ししますよ。
墓石に額づく姿がいいですね。
まさしく詩がかけそうな雰囲気ですね。

2008/04/23 00:26
ほんとほんと。随分気を揉みましたよ。
それでも多分、「エジ旅(笑)」の方が数倍大変だと思いますけどね。
ヌスラットは黙ってるとほんと哲学者&芸術家の風貌なのですが。彼の天然っぷりは実際に話してみないと解らないのです。文章ではうまく表せな〜い!
あ、ハーフェズ廟には碧さんも行くことになりますからね!
elly→碧さん
2008/04/23 23:46
あ〜みんなやっぱりハーフェズ廟で囲まれるのね〜。
私たちだけでなくてよかった。

機内楽器持込は私も神経とがらせます。
同行者がいる場合は、X線の前で待機してもらって
通したら即受け取りをお願いしてます。

しかしバーザールの写真、秀逸です。

りーず
2008/04/26 06:15
ハーフェズ廟、笑えますよね。りーずさんが囲まれて微笑んでいる写真が印象に残ってます。ヌスラットの楽器の件は本当に残念な出来事でした。シーラーズで応急処置としてボンドで固めていましたが、今頃どうなっていることやら。おじいさんの代から伝わる「名器?」らしいので、ひやひやものです。りーずさんの楽器「同伴」の旅では、私が必ずX線の前で待機してお守りします!
写真、褒めて頂きありがとう!今回は世間の目に触れる(ブログ以外でも)という想いがあり、少し気合入れました(笑)。とは言っても技術的な面では未熟なのですが。
elly→りーずさん
2008/04/28 02:42
ご無沙汰です。ずいぶん遅れてのコメントもすみません!
普通の観光旅行とは違うリポートもとても新鮮です♪イランの建物とか景色とかだけでも日本とは違っていてわくわくしましたが、このトルコイラン旅行では単なる観光客では入り込めない貴重な体験をされていてほんとに羨ましい〜☆
そして、チャングムの誓いがイランで放送されて大人気だったことにとても驚きました!私もサイン求められたい〜!!(笑)自分の名前を書けばいいのかしら?^^;
「ヤンゴン」というのはチャングムという意味かな?
wacky
2008/05/05 14:21
たくさんコメント残してくれてありがとう!
読むだけで大変な(苦笑)旅日記なのに・・・ね。
今までもいろいろ印象に残る旅をしてきましたが、やはり今回は特別なのかも。人と出逢う機会が多い一人旅においてさえも、絶対にありえないような出逢いがたくさんあったし。
チャングム、おもしろいよね。この話を書いてて、真っ先にwackyちゃんのこと思い浮かべてた(笑)。サインは、自分の名前でOK(笑)。
「ヤンゴン」は、チャングムのことだけど、「チャングム」っていう語の持つ音の全てが存在するペルシャ語で、なぜ「ヤンゴン」という名になったのかが謎です。誰もこの問いに的確に答えてくれる人がいません(笑)。ヤンゴンが何なのかを知るまでは、「ヤンゴン」って子供達から声を掛けられて、みんなミャンマーが好きなのねって思ってた(笑)。
elly→wackyさん
2008/05/05 22:41
そうそう!私もイランでは、「チャングム」が韓国ドラマではなくてミャンマーのドラマだと思われているのかななどとくだらないことを考えていました(笑)
wacky
2008/05/11 16:35

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