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zoom RSS Deep Breath/神秘か?幻想か?〜mercan dede〜

<<   作成日時 : 2006/05/30 18:44   >>

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[Nefes(breath)](2006年)
mercan dede画像
1.Hininga
2.Dem
3.Ginhawa
4.Samana
5.Huo
6.Zefir
7.Napas
8.Engewal
9.Breath
10.Huxi
11.Halitus
12.Souffle
13.Atman
14.Behin
15.Moya Alitu
*全てのタイトルは様々な言語でbreathを指す言葉だそうです。

また間が開いてしまいました。
ブログを更新しなかった間何もしていなかったわけではないのですが、ちょっとしたことを片付けるだけで、あっという間に時間が経ってしまいました。以前も言いましたが、これが「東京時間」?東京にいると地方にいた時より速く時間が過ぎて行く気がします。
そんなあわただしい日々の中、私の心を少なからず落ち着けてくれたのは、やはりこのCDでした。トルコ・スーフィー音楽新進気鋭の音楽家・ネイ(葦笛)奏者、メルジャン・デデの新作。
先月サラーム海上さんのブログで発売を知ってから、先々週の発売までとても楽しみにしていました。

忙しく、まだ腰を落ち着けて聴き込むところまで行っていないのですが、ブログに書かないでいるとまたどんどん時間ばかりが過ぎていくので、そろそろひと言書いておこうかと思い立ちました。(ですから、今回は(も)かなり詰めがあまい点お許しあれ!)

CDを聴いてまず思ったこと。
とてもコンセプチュアルな作品で、主題が明快。
『breath(原題『Nefes』)』というタイトルからも想像ができるよう、「息(ブレス)」を用いる(吹奏)楽器や息(声)そのものを楽器と見立てた演奏など、スピリチュアルで穏やかな世界観を見せてくれる半面、とても情熱的で昂揚感まで与えてくれる今作。作品自体にはとても心動かされたし、聴いていた段階ではとても分かりやすいアルバムだと思いました。でも、実際言葉に移そうと思うと、どうもうまく説明ができないのですよ。今までレヴューを書いた中で、実はもっとも書きづらい気がしてます。

前作の『SU』(水)、前々作の『NAR』(火)に続き、イスラーム哲学の4大元素である「空(空気)」を表している『breath』では、メルジャン・デデ自身によるネイの演奏はもちろんのこと、クラリネットが楽曲に多く用いられ(4曲目のクラリネットがメインの楽曲は、セルカン・ジャグリというジャズ系?のクラリネット奏者が演奏しているそうですが、スーフィー音楽とジャズ的なアプローチのミックスが見られる点がステキだなと思いました。)、またNIYAZのVo.、アザム・アリや、クルドの女性歌手アイヌールなどのディープなVo.ワークをフィーチャーしている点も大注目です。
そして、アルバム全体に深い「呼吸」が息づいています。
人がリラックスの状態に入って行く時には、まず呼吸が重要ですよね。
そして、深い瞑想に落ちていく時に、それを助けてくれるのは呼吸に他なりません。
人の「気」と「呼吸」は身体の奥で深く結びついていますし、宗教的な面から見れば、息は宇宙的なものとのつながりも持っています。ですから、多くの神秘主義的な宗教では「我=息=宇宙」と繋がっていくのでしょう。その最たるものが、13の曲のタイトルともなっているインド哲学のAtman。(Atmanは息を指すと同時に「自己」をも指します。)スーフィズム(イスラーム神秘主義)でも、葦笛という、「息」を用いる楽器はとても重要です。
アルバムの中でこの葦笛ネイと、人間の、時にはマイクいっぱいに近づけたような生々しい吐息やウイスパー・ヴォイスが情熱的に絡み合います。私はここで改めて思いました。
正当のムスリムから見たら、スーフィーはイスラームではないという主張は尤もだ、と。
メルジャン・デデの搾り出すようなネイの音にしろ、楽曲バックにかすかに聞こえる息使いにしろ、とても官能的で、生々しい。サラーム海上さんが書かれているよう、それはもちろんエロティックな官能ではなく宗教的な官能なのだけれど・・・。

そして、「息」の楽器以外にも際立って聞こえるのが、ウードエレクトリック・ヴァイオリンによるアンサンブル。中でも10曲目の、ダルブッカの音がピリリと効いた楽曲での競演は、とてもスリリングで聴き応えがあり、メルジャン・デデ=ネイではないのだなあと強く思ったのでした。1曲目で断然耳を惹き付ける、サラームさんが「テープを逆再生したような」と形容されるハーディ・ガーディ・サズ(え、この二つの楽器が合体するとこういう音になるの?!)という楽器も、とても興味深いです。(いや〜、ホント世界にはいろんな楽器がありますね!)
5曲目の重々しい打楽器の連打が採用されている曲もとても印象深いです。
引きずるようなリズムと、弦楽器が奏でる少し不安感を煽るような旋律、しかし聴いているうちに、それは陶酔感へと変わって行きます。でもその導く先は天空の光明ではなく、暗い水の底に沈み込んでいくような感覚。そんな楽曲に続くのは、ムアッズィン(礼拝を呼びかけるアザーンを行う人)によるクルアーン(コーラン)の朗誦をフィーチャーした曲。そこで今度は逆に、一気に高みへと連れ去られる感を、私は味わえました。
そうそう、アルバム全体を通して、前回までに比しても(前2作しか私は聴いていませんが)、ネイ以外の楽器にとても重点が置かれているように思いましたよ。

歌の話に戻りますが、アザム・アリ、改めて歌唱力がある人なんだなあと・・・。
彼女の声が聞こえると、一気にひきつけられるといった派手さはないものの、ずるずると引きずりこまれていく神秘性がありますね。『NIYAZ』のライナーでも、今回のCDでもサラームさん、書かれていましたが、アザム・アリの声ってゴスっぽい?!『NIYAZ』ではデッド・カン・ダンスっぽいと書かれていましたが(実は私かなり好き)、中世ヨーロッパっぽい異教的・退廃的な彼女の声のムードは(ルックスも然り)、まさにゴスなのですね〜〜。アザム・アリの歌う曲ではバックに吹きすぎていく風の音のサンプリングが入っているように思うのですが、(「風」も「息」との繋がりが濃いですね!)、それがまた楽曲の神秘性を増すことに一役買ってるんですよねぇ。そして、メルジャン・デデのネイの擦れた音がまた風の音に聞こえるという・・・。う〜ん、いい曲!
それにしても、収録されている2人の女性Vo.はとても対照的だなあと思いました。
メリスマを効かせることなく、さらりと歌っているようでいて、とてもディープな神秘性を醸しだすアザム・アリの低い歌声。一方、コブシを効かせ、伸びのいい高音域まで迫力たっぷりに歌いあげるアイヌール。「息」の出し方や、唄法を比較するネタには事欠かない程、おもしろい相違を見せてくれるふたりですが、そのどちらもネイの旋律と絶妙に絡みつき、美しい陶酔感をもたらしてくれます。
8曲目の「アフリカのピグミーに似た不思議な男性ヴォイスの多重録音」(ライナーより)が入っている曲も、不思議感がいっぱい。ピグミーの歌というのを私は想像できないながらも、低い唸るような男性Vo,が重なったコーラスは、聴き様によっては声明っぽくも聞こえました。
まるで古今東西の神秘的なもの陶酔感のあるものが一堂に会したかのような豪華さですね。

メルジャン・デデの持ち味のひとつであるエレクトロニックなアプローチ部分が後退し、より生音に重点を置かれた本作。これは、人間のよりリアルな「息」使いを強調したかったからではないかしら?
前回の水の流れるような流麗な音も好きだったけれど、より生々しい今回の音も、もっともっと聴き進めるうちに、益々深みにはまっていきそうです。


そんなdeepな世界から抜け出すには、はい、必要でした。
ラストのシークレット・トラック。人の話し声でざわつく、カフェの内部を思わせる雰囲気のSEをバックに奏でられる、ネイとクラリネットの自由な雰囲気の演奏。どこかしら牧歌的な優しいメロディーは、夢の世界の続きであるようにも感じるけれど、徐々に意識を現実世界へ戻すための「リハビリ」のようなもの。そう、メルジャン・デデの音世界で夢を見てしまったら、そこから一気に目覚めるのは至難の業だから・・・。でも、目覚めたら別の意味で覚醒しているかもね・・・
あーーー!10月の公演が待ち遠しい!

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
 こんばんは!
 このメルジャン・デデ新作は買う予定がずれ込んでしまい、おそらく近日中には聴けると思うのですが、
 ・・・アザムが参加!ハーディーガーディー・サズ!!一気に期待が高まりました〜。ネイ大好きですがそれ以外の楽器や音たちもかなり効果的に活躍しているのですね。

 来日が本当に楽しみです^^
えひ山
2006/05/30 23:16
最近『えひためブログ』へあまり遊びに行けずすみません。
メルジャン・デデの新譜、えひ山さんならきっとまたレヴューを書いてくださると密かに期待しています(ははは)。
アザム・アリはやっぱりいいですね〜。
これ聴いて、ますますお気に入りのヴォーカリストになりました。ネイ、私も大好きで、好きな楽器の5本の指に入るくらいなんですが、このCDでは他の楽器や声との相性が良く、すでにかなりお気に入りのCDとなりました。
来日、待てないです。しかしチケット取れるか、ちと心配…。
elly→えひ山さん
2006/05/30 23:31
ご無沙汰してました。ellyさんブログはまめに拝見しているのですが、最近ちょっと脳みそがぼろぼろな感じで、気合い入れてコメントするのをついついサボりがちでした、ごめんなさい。その間ellyさんも迷惑コメントで大変難儀な思いをされていたようですが、その後いかがでしょうか?
メルジャン・デデ新譜を聴かれているんですね〜。
僕はもう来月までCDは買えません(泣笑)ので、いまはデデの『NAR』を聴きながらコメント書いております。15曲各々のタイトルがすべて「息/呼吸」を意味することばだなんて素晴らしいコンセプト・アルバムのようですね。やっぱ買わねばなるまい…。
最近サボりっ放しの太極拳においても、上達するに従い「呼吸」を意識していくものだと聞きました。なるほどそれは当たり前の動作であるために我々はつい「呼吸」を軽視しがちですよね。こんど太極拳の練習BGMにこれをプッシュしてみましょうかね?
questao
URL
2006/06/01 00:59
す、すみません!
カキコミしていただくのに、完全にプレッシャーを与えてしまっているかも。。。
いや、もうまめに読んでいただいているだけで光栄ですので、くれぐれも無理して記入なさらないでくださいね。
4,5月は私の方こそ脳ミソが呆けていました。そろそろ復活してくれないものかしら…
『NAR』は名盤ですね。4年?経った今でも、ずっと聴いています。
そう、太極拳やヨーガなど気や呼吸法を取り入れた運動をなさっている方なら、息使いに敏感でいらっしゃるはず。でも、太極拳にメルジャン・デデ、思いつきもしませんでした〜。おもしろそうですね。
elly→questaoさん
2006/06/01 14:56

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