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zoom RSS 『愛より強い旅(EXILS)』

<<   作成日時 : 2005/11/23 17:42   >>

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画像『愛より強い旅(EXILS)』サントラ盤(日本発売は05年)

01.EXILS はみだし者
02.UN,DOS,TRES NADA MAS 1,2,3 それで終わり
03.MANIFESTE マニフェスト
04.NOIR ET BLANC 黒と白
05.QUIN QUIN キャン・キャン(可愛いマイ・ベイビー)
06.CEUX QUI NOUS QUITTENT 去り行く人々
07.PASSEPORT パスポート
08.ALGERIA アルジェリア
09.BULERIA ブレリア
10.SEPARE DE SES FRERES 同胞から離れて
11.LES BOUTEILLES ボトル
12.BULERIA ブレリア
13.SEPARE DE SES FRERES(instrumental) 同胞から離れて(インストゥルメンタル)
14.WILLY LE TAXI タクシー・ウィリー
15.TRANSE トランス

もうすぐ公開になるトニー・ガトリフ監督の最新作『愛より強い旅(原題:EXILS)』(04年)のサントラ盤が20日に発売になりました。数ヶ月前より楽しみにしていたこのサウンドトラック(ジプシー音楽』の記事参照)。早めにご紹介したい!と思い、記事をUPすることにしたのですが、何せ、ストーリーが音楽で成り立っていると言ってもいいくらい音楽にこだわりのあるガトリフ作品、映像と音楽は切っても切り離せない関係ゆえ、詳しい感想やご紹介は映画を観てからにしようと思っています。

今回の作品の特徴は、サラーム海上さんがライナーノーツで分かりやすく分類されているとおり*、大きく分けてテクノフラメンコライスーフィー音楽から成り立っていることです。そして、それぞれの音楽の境目は曖昧で、それらのジャンルをフレキシブルに行き来しているようなサウンドが聴かれることも大きな特徴です。つまり民族音楽や伝統音楽をベースにしつつも、それらを絶妙にミックスさせたり、現代風のアレンジを入れたりして新しい音を聴かせているとも言えるのです。(その点は今までのガトリフ作品にもある程度言えることですが)
収録されている15曲のうち、ミクスチャーでないと言っても良い曲はわずか5曲、そのうち2曲は元曲のインストヴァージョン、あるいは繰り返しなので、わずか3曲のみが伝統的な音楽だと言えると思います。1曲は、フラメンコのブレリアス(フラメンコの中でも最高峰と言われるヘレス発祥のパロ(曲)。手拍子と掛け声を重視する点とテンポの速さが特徴。)というジャンルの曲で、2曲はアルジェリアのライがポップス化される以前の、歌唱に重点が置かれたシンプルなライの曲となっていて(ライを伝統的音楽というのは語弊がありますが)、この2曲はこの映画の中で象徴的な役割を持っているように思えます。
と書くと、簡単にストーリーの説明を入れざるを得なくなりますね。
アルジェリアがフランスから独立した際に、フランスへ引き上げてきた元アルジェリア移民の両親の下に生まれたフランス人青年と、その青年のマグレブ系の彼女が、なんとなく自らの居場所がみつからないパリでの生活を捨て、自らのルーツとも言える北アフリカを目指すというもの。パリを出発し、スペイン・アンダルシア地方を通り、モロッコからアルジェリアへと入っていく過程が、音楽と共に、美しく、時には厳しく描かれているようです。
で、先ほど挙げたライが象徴的だと思える理由ですが、理由はその歌詞です。7のPASSEPORTという曲は、北アフリカの人間がパスポートを手に入れ、国を捨て新転地を目指して出て行ったという内容。10のSEPARE DE SES FRERESは、祖国を離れ、かといって新しい国にも馴染めない(まるで主人公二人のような)「精神的」根無し草の状態を、「引き抜かれた葦」に喩えている内容。葦という植物は、実はイスラーム神秘主義の詩においても重要な隠喩で、「神から離別した状態」「神に近づけない苦しみ」を、葦に喩えることがあるのです。というのも、葦が風に吹かれる音が、人が咽び泣く声に似ているからなのですが。主人公の寄る辺無さがうまく曲で表現されている気がして、映画の中ではどのシーンで使われているのかというのが非常に楽しみにしている部分です。曲には勿論のこと葦笛ネイが使用されています。

サントラを通して聴いて、最も印象に残った曲は6のCEUX QUI NOUS QUITTENT。聴いた第一印象は、とにかくいろんな音が交じり合っていて、ひと言でこんな曲と言い表せないということ。ドラムンベースの使用とジプシー風歌唱の女性のしゃがれ声、そのバックに流れる朴訥とした女性の朗誦の声が妙に不安感を煽る曲なのですが、説明がライナーノーツに詳しく書かれているので、それを引用させて頂こうと思います。「ダフ(大型タンバリン)とドラムンベースのビートの上に、喉の震わせ方がイランのタハリール唄法や東欧のジプシー伝承歌を思わせるフランス語の女性の歌、アラビア語の朗読が乗り、加えてなんと東欧ジプシー音楽を代表するタラフ・ドゥ・ハイドゥークスのメンバーがツィンバロン、クラリネット、アコーディオン、ヴァイオリンで参加している。それらがごく自然に溶け合っているので、多くの人は気付かないだろうが、この曲は世界初の北アフリカ・東欧ジプシー・ドラムンベースと言っていい。」このサラーム海上さんの文章が、このサントラの特徴の殆どを言い表していると思います。この特徴は他の曲にも言えることで、例えば2、3のテクノ調の曲も、打ち込みのビートの上に、スーフィー音楽の特徴であるダフの繰り返しのリズム、ラップやパンク風の歌(歌はローナ・ハートナー担当。ローナとタラフはもはや『ガトリフ・ファミリー』ですね!)が乗っていて、さらにジプシー音楽のアコーディオンやクラリネットの音がスパイスを効かせているというミクスチャー構造になっています。

気になるのはLES BOUTEILLESという曲。これはボトルが割れる音がサンプリングされた曲だが、『VENGO』では車のエンジン音で鍛冶屋の鎚を打つ音(アンダルシア地方のジプシーをあらわすのに鍛冶屋は重要。『VENGO』フラメンコ音楽に聴くジプシー』の記事を参照)を表したガトリフ監督だけに、今度は何を表しているのだろうと期待するところです。ボトルはジプシーの象徴でもありますから。

そして、ライナーノーツによって気付かされたことがもうひとつ。私は普段テクノやクラブ系の音楽を全く聴かない人間なのですが、スーフィー音楽とテクノの間に共通点があるということ。またサラーム海上さんのお言葉を拝借すると、この2つの音楽は「機械のビートと生のビート、現代と前近代、都会と辺境という違いはあるが、一定のパターンを脅迫的に繰り返すことで聞き手をトランスへ導いていくという点で共通する。」とのこと。確かに2,3の曲と、最後に収録されたTRANSE(アルジェリアのスーフィー音楽をガトリフ監督が独自にアレンジしたものだそうで、延々と10分以上一定のリズムとベルベルの掛け声が繰り返される曲です)を聞き比べると、その多くの共通項に驚かされます。
映画の中では、物語の冒頭にMANIFESTEが、ラストにTRANSEが使われているようですが、フランスから自らのルーツである北アフリカへの「精神的」回帰(あるいは「亡命」)を、テクノとスーフィーという、一見相反するようでいて類似する音楽でうまく表していて、なんとも良くできた映画だな〜と感心させられるし、これらの音楽が円環するリズムを描くのと同様に、サントラ盤を最後まで聴いて、再び冒頭に戻って最初から聴きなおしたいという気持ちにさせられる不思議な感覚を持ったということを書き添えておきたいと思います。

*『音楽と旅する新しい地球の歩き方』(笑)ということで、ジャケットの最後には、地図と、物語が辿る道筋と、それぞれのシーンで使用される音楽の説明が入っています。

『愛より強い旅』オフィシャルWebサイトはコチラ

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