ケルトの記憶~LUAR NA LUBRE~

画像
『HAI UN PARAISO』 (04年。日本では05年発売) LUAR NA LUBRE

1.天国があるさ[巡礼者の行進曲] HAY UN PARAISO
2.わたしの国 O MEU PAIS
3.月がひとつ(アカシアの葉) UAH LUA(FOLLA DO VISGO)
4.悲しみの記憶[ガリシアの海を汚したプレスティジ号へ] MEMORIA DA NOITE
5.世界には NO MUNDO
6.リバダビア RIVADAVIA
7.コルメ CORME
8.そばにおいで ACHEGATE
9.アルフォンソ10世頌歌 CANTIGAS ALFONSO Ⅹ
10.光の詩 VERSOS DE LUZ
11.パンド PANDO
12.月がひとつ(リミックス) UAH LUA(FOLLA DO VISGO)
13.天国があるさ(リミックス) HAY UN PARAISO

先日に引き続き今日もスペインの音楽をご紹介したいと思います。
今日ご紹介するバンド、LUAR NA LUBREは、スペインガリシア地方出身のトラディショナル・ミュージック・バンドです。
ガリシア地方はスペインとは言っても、アイルランドスコットランド、それにフランスブルターニュ地方同様、ケルト文化の色が濃い地域です。古代、ローマ人がこの地方に入る以前にはケルト人の土地だったからです。風景的にもピレネー以南のスペインの赤茶けた大地というよりは、霧深い森のイメージが強いので、まさにケルトを連想させますよね。当然、音楽にもケルト色は色濃くうかがえます。

ガリシア地方を代表するトラッドのミュージシャンと言えば、ガイタカルロス・ヌニェスが世界的に有名ですし、来日も果たしていますが、私の心を捉えて離さないスパニッシュ(いえ、「ガリシアン」、ですね)ケルトといえば、このLUAR NA LUBREをおいて他にありません。

主なメンバーは、紅一点のロサ・セドロン(Vo, チェロ:このCDの時点では。現在はサラ・ロウラソ・ビダルという人にかわってます)、バンドの中心的人物のビエイト・ロメロガイタ(バグパイプ)、アコーディオン、ハーディ・ガーディ(古ヨーロッパの擦弦楽器))、シューリオ・バレーラブズーキ、Vo.、パーカッション)、シャビエル・フェレイロ(パーカッション)、エドゥアルド・コマ(ヴァイオリン)、ペドロ・バレーロ(アコギ)となっていて、おおよそアイリッシュ・ケルトと似たような楽器編成ですが、本作ではゲスト・プレーヤーとして、ウード奏者などもフィーチャーされています。このウード奏者ワフィール・ジブリルは以前RADIO TARIFAにいた奏者だそう(ライナーノーツによる)で、これもファンとしては注目するところでした。(RADIO TARIFAはアンダルシア地方で活躍するアラブ・アンダルース音楽のバンド)

本作は、前作『Espiral』に続き、ロックチューンが以前よりも増していたり、キャッチーなメロを採用していたりで、より「世界を目指した」つくりになっているのが窺えます。1の「HAY UN PARAISO」ではキャッチーなギターリフが繰り返され、リズム的にもトラッドというよりは、ロックに近いように思われますが、そのリズムの上を縫うように進むガイタのフレーズは紛れもなく、ケルトです。この曲は04年の聖ヤコブ年公式音楽として採用されていたものだそう。ガリシアといえば、カトリックの有名な聖地、サンティアゴ(聖ヤコブ)・デ・コンポステーラを抱えています。フランス側からピレネー山脈を越え、聖地へ向かう巡礼者を鼓舞するような音楽に仕上がっています。また、サッカー場でも(ガリシア地方のホームグランドかどうかは不明。サッカーにはさほど詳しくないので。)好んで流されているということで、ガリシアの民族(地方)意識を奮い立たせる何かがこの曲にはあるのでしょう。
この曲以外にも、ガリシアの土地への愛情や敬意、誇りを感じさせる楽曲が多く採用されています。今までのアルバムにも勿論その傾向は窺えましたが、今回はさらに「ガリシア主義」的なものが強まっているように思いました。

3の「UAH LUA」では、リズムやコーラスのリフに、スコットランドワウキング・ソング(砧打ちの女性労働歌)を援用している(ライナーノーツ)とのことだし、5の「NO MUNDO」ではメロディはイングランドのトラッド・フォークを援用している(ライナーノーツ)ということで、本場?のケルト音楽への敬意も多分に払われているといえるでしょう。(当然ですが)

10の「VERSOS DE LUZ」ルンバ調の曲調が採用されていて、ここにて一般的にスペイン音楽として認識している音楽に近いものが聴けます。

ガリシア=ケルト文化として書き進めてしまいましたが、ここガリシアも様々な文化が行き来し、交流する場だったようで、先に書いたよう、ケルトに始まり、ローマアラブによる支配は勿論のこと、ロマもこの地方を通ってスペインに入ったのではと考えられているようですし、ピレネー以北からの巡礼者も多くの新しい文化をもたらしたことでしょう。(ガリシアに限らず)スペインといえば、ユダヤ民族が多く住んでいた地域だけにセファルディ音楽の影響も抜きにしては語れません。近代に入ってからは中南米から逆輸入的に新しい音楽も入ってきたようです。(このあたりはライナーノーツにも書いてあるので、聴いてみようと思う方はライナーノーツも要チェック)これだけ書いただけでも、いかにミクスチャー的な文化が形成されていったかが窺えるというものです。

ダラダラと書いてしまいましたが、ケルト音楽や他の伝統音楽、民族楽器、さらには歴史に関する知識など棚上げにしても、一番心打たれるのは、純粋に音楽の美しさだということを言いたかったのです。ガリシアの自然を連想させる独特の透明感と神秘性を湛えた歌詞(ガジェゴ(ガリシア語))も必読です。美しいだけの音楽では物足りないという人、どこかに毒がないと、という人(私の好きなものにも、その傾向があるのですが)には、ひょっとしたら物足りないかもしれない。。。けれど、元来音楽が生まれて来た、また育ってきた環境って、こんなピュアなものだったんじゃないかしら?と思うと、あーだこうだと考えなくても、自然と感動できる何かを湛えた音楽ですよ。勿論、演奏は技巧的ですし、プリミティヴなところは全くありません。ですから、理論的に音楽を楽しむことができる人にも訴えかけるものは十分にあると思います。

こういった音楽を聴いていると、我々のスペインに対して持っているイメージが、いかに白い町並みやフラメンコに代表されるアンダルシア地方、あるいは、ドン・キホーテの風車小屋で描かれるカスティーリャ・ラ・マンチャ地方に偏っているかが分かります。
この前書いたようにバルセロナを中心としたカタルーニャ地方にせよ、ガリシア地方にせよ、またアンダルシア地方にせよ、「スペイン」とひと括りにはできないくらい、多様な文化を備え、違った歴史を歩んできました。国家を考えるときはいつも、単一民族に集約して考えがちですが、地方の独自の文化や周縁の地域に少し目を向けるだけで、世界は違って見えてくると思いませんか?

尚、LUAR NA LUBREの音楽、ガリシア地方の風景に触れてみたい方は、以下のサイトでどうぞ。
UN BOSQUE DE MUSICA
アルバムと同時に発売されたドキュメンタリー映像のwebサイトです。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 2

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた

この記事へのコメント

筑紫万葉
2005年10月24日 20:22
 適切な表現ではないかもしれませんが、音楽の融合や分布などでも、民族の融合や移動(当然、文化も移動しますね)といったものが、わかるのでしょうね?
elly→筑紫万葉さん
2005年10月24日 20:47
はい。音楽も文化の一形態ですから、その分布や変遷を見れば、ある程度民族の移動の跡も見ることができると思います。私はあまり詳しくありませんが、そういうことをフィールドに出てやっている方もいますよね。
2005年10月25日 04:39
おはようございます。
世界の音楽は,歴史を踏まえて紹介する必要がありますよね。勉強になります。
(が,拙ブログでは雑感とさせて下さい。)
このグループの前作を購入し,前半部分で,
期待していた(ガリシア地方のケルト音楽って稀少だなと思い,続けて,これは特殊かもと勝手に想像)ものとは異なり,やはり意外にオーソドックスに聴こえ,手もとから遠のいておりましたが,ellyさんのおかげでまた聴けることとなりました。感謝,感謝!!
hoaloha
2005年10月25日 08:52
ellyさんこんにちはー♪音楽と文化と歴史。今まで深く考えたことなかったですが、いろいろなサイドから見てみると面白いですね。
私も今はハワイアン、その昔はバリ島の民族音楽が好きでよく聞いていましたが、音楽の背景についてもいろいろ知りたくなりました。
それから私信で失礼しますが、kyokoに便乗させていただきます♪とーーーっても楽しみです☆よろしくお願いします。
elly→NAKAさん
2005年10月25日 12:22
いや、LUAR NA LUBREは、確かにNAKAさんには物足りない気も。。。ケルト色がもっと強いものがよろしければ、前作より以前のものや初期のものが良いかもしれません。NAKAさんは、それこそ、「美しいだけじゃ。。。。」ですよね?
あと、私が気に入っているグループにケルティック・プログレらしきものをやっているIONAというのがありますが、そちらはさらに「薄い」かな。
elly→hoalohaさん
2005年10月25日 12:25
hoalohaさんは島唄系ですね。ハワイアンはよくブログでご紹介されてますよね。またおススメを教えてください。
土曜日、楽しみにしております。初めてお会いするので緊張してますが。実は週末からひどい風邪をひいてしまったので、移さないよう早く治したいと思います。
hoaloha
2005年10月25日 13:44
ellyさん、度々おじゃまします。
風邪大丈夫ですか?体調悪いようでしたら、またの機会にしてくださいね。無理されませんように。お大事にしてくださいね。
elly→hoalohaさん
2005年10月25日 15:59
スミマセン、ご心配おかけして。土曜までには治したいと思います。
Issaclag
2017年07月16日 21:08
The best proekts 2017. ミ裄��燾� �粢澵鐱 �裲上矢印1 蓁� 鈞[]碚四角数字6�, 鈕ⅱ魵� � ⅳ蕘夜/流れ星 2017
Jeffreyalelp
2017年08月24日 17:21
マ粢� 糂褌 瑰四角数字9韭瑟! ハ�瑰燾� � 籵� 鶯!
ヘ璧ク� 竟四角数字1鮱 � 四角数字4: マ趾褊韃 Elex 鈞鴈ク� 碚�裹 50-四角数字4 �
ン淲[]髙頸 vs �淲[]ⅲ褞粨� http://inosmip.ru/articles/450-energoaudit-vs-energoservis.html
http://inosmip.ru/news/9603-v-germanii-sozdadut-lift-bez-kabelya-sposobnyy-peremeschatsya-gorizontalno.html
濵粽� 濵粽韋 5 蒟�珮� �鸙頸韭� 濵粽韋 胛蓖�
SvetaTodus
2017年11月01日 15:54
ム裲�-ハート� � ネ� ォLedesire.shopサ �蓁璢瑯� ��焏鞴褊イタリア国旗琿�燾� 四角数字0籵 蓁� 粡顥.

モ蒡硼� 浯粨聰イタリア国旗� ォLedesire.shopサ �鰀粽��褪 �鮏髜[]下矢印1 炫跫鐱 �� 鞳メモ� � ネ�, �鸙頸� 蒟[]��炫� 竟璋� � 褄瑣� 鈞�珸, � 硴�蒟湜� �魵韜 �鸙濵� 瑙�湜�濵�.
ム裲�-ハート� � ネ� ォLedesire.shopサ
aeytovareschCoags
2017年11月27日 06:12
満マーク砒 �

2018prikol-youtube.blogspot �淸裲� 粨蒟�


--------------------------------- ⅳ

ⅳ下矢印1 砒�瑣濵 � 砒� 肛[]イタリア国旗
children-cartoons-go.blogspot �ⅳ褊鶴 聰�


--------------------------------- ⅳ

�韵� 蓁� 蒟四角数字1� ⅳ下矢印1 �溿琺� 砒�瑣濵 �鮏�� 浯 �黑
youtuber-super.blogspot �満マーク� 璞瑣� 粨蒟鶴�韵� 砒�瑣濵 � 砒� 肛[]イタリア国旗� � リボン� �璞褥大丸1

この記事へのトラックバック