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zoom RSS 世界の路地〜サントリーニ島(ギリシャ編)〜

<<   作成日時 : 2009/05/27 21:45   >>

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画像街全体〜それは建造物や街の空気感を指す〜が豊かな芸術性を有し、訪れる人に、アーティスティックな感覚を喚起させる場所が存在する。例えばバルセロナという都市がその一例である。バルセロナは、街角の至る所にモデルニスモの洗礼を受けた、絡みつく植物や、花びらの重なり、重厚な岩、うねる波や流れる雲を連想させる建築物が聳え、人々の目を楽しませる。美術館へ足を運ばずとも、街の喧騒、雑踏の中に、芸術の躍動の姿を追い求めることができる稀有な街だ。自然の中に顕現する曲線を豊かに表現したモデルニスモの芸術家たちが造り上げたバルセロナの街並みは、それ自体、自然と人工が巧みに共存した街だと、ある意味では言えるのかもしれない。

それとはまた少し違った意味で自然と人の手による世界が美しい景観を作り出している場所が、同じ地中海の街にある。それはサントリーニ島のイアという街。サントリーニ島にはフィラとイアという、ふたつの大きな街があるが、フィラはどちらかというと、エンターテインメントに溢れた賑やかな街で、イアは落ち着いた芸術家の暮らす街、という風情である。
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2回目のサントリーニ島訪問となったのは、まだ冬の明けきらない3月末。地中海を象徴するような白壁に架けられた真っ赤なゼラニウムの花の鉢が散見される以外は、観光シーズンを迎える前の、閉ざされた辺境の島という様相を呈していた。
白い街並みに照りつける午後の太陽もまだ弱々しく、不安定な光線を路地の石畳に投げかける。
数々の映画や小説の中で、人々のエーゲ海への憧れを掻き立ててきた魅惑的な青と白の街並みも、まだ覚め切らぬ浅い午睡の中でまどろんでいて、それは強烈な夏の午後のむさぼるような午睡とは違って、路地の片隅に潜む地中海様式の石作りの家の居間のソファから、静かな寝息がそっと聞こえてくるような、密やかな怠惰と喜びに満ちていた。
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路地は人々の声と音楽と喧騒で溢れている。
そして、私が路地が好きな理由(わけ)は、主にそんなところに潜んでいる。
だけど、私の中の路地のイメージを覆す、静寂に彩られた路地が、ギリシャの島にはいくつも存在する。(尤も、観光シーズンは別・・・だろうが)人々が暮らしている気配が不思議と漂ってこないのは、きっとある時間帯街全体がまどろみの底に沈んでいるから。私は、そういった路地に出逢った時、シュールレアリスムの絵画を鑑賞する時と似た感覚の静寂が頭の中を支配する。
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静寂に包まれた空間の鎖が、ふとちぎられる瞬間。
それは、シエスタの時間が過ぎ、店が徐々に開き始めるとき。夕陽を見ようと、観光客が路地のそぞろ歩きを始める時間帯。夏の観光シーズンを目指し、ゲストハウスやレストランの漆喰塗りに勤しむ人々の姿を見かけた時。ロバの嘶きと馬蹄の鳴らす硬質な音が遥か下の方から聴こえてきたとき。
それらの静寂の崩壊は、やはり路地を舞台に起こる。完璧な絵画(音を感じさせない)であった路地が、生活の匂いを運んでくる瞬間。
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白と青で統一された街並みや、気まぐれに組まれたようでいて完璧に計算された石畳の一枚一枚や、狭い路地を抜け、断崖絶壁を這うように小さな港に下りていく石の階段や、潮を含んだ風雨に晒され、あるいは歴史的に数々の大地震に見舞われ常に修復を余儀なくされる漆喰塗りの石の家や、冬場数少ない観光客の気を引こうとする路地に立ち並ぶ土産物屋やそうでない土産物屋、自らの手によるジュエリーやイコンや、絵画や、ちょっとした手作りのアート作品を並べる小洒落た店舗の売り子や、島内の細い路地を徘徊するたくさんの犬たちの姿や、観光客を乗せるために鍛錬されたロバたちのベルの音や悲しげな泣き声までもが、一斉に動の時を得る。
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観光客がイアの街を訪れるのは夕刻。三日月型の島の西の突端に近い場所に位置するイアの街からは、美しい黄昏を臨むことができる。運よく満月に近い時期だと、太陽が沈む様と大きな月がフィラの街の方角から昇ってくる様を、同時に拝むことができる。
神聖な時間。溶解する時間感覚。この世で一番完璧な時間が辺りを包み込み、その時紺碧のエーゲは天空に完全に支配され、その碧の色を一時的に「宙(そら)」に譲り渡すこととなる。その譲渡の瞬間は、思ったよりも短く、あっけなく過ぎていくが、それに続く漆黒のつらなりまでを含めて、壮大な神話のショーは完成する。
日々繰り返される神話の世界。
そして、日々繰り返される路地を舞台とする営み。
静寂の路地を徘徊し、路地に既視感を覚える頃、太陽は姿を消し、街は暗闇に閉ざされた。

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
つまびらかなellyレポートにいつもほれぼれとしていますが、この路地シリーズは、情緒的でellyさんの人となりがよく表れていて大好きです。
3月は光がやわらかで、影もぼんやり感がたまりませんね。
サントリーニは、くっきり!真っ青!まっ白!のギリシャの定番の他にこうした、黄昏時の広い建物が暖かい色に包まれる姿も最高。
笹倉鉄平でも見に行こうかしら…

2009/05/28 11:21
文章に関しては、碧さんに読んでもらって味わっていただけるのが一番嬉しいかも(怪しい・・)
地中海の初春は、思った以上に光が柔らかで優しくて、心癒される風景が広がっていました。碧さんも書いてたけど、青い空・海に黄色の花が織り成す光景もまた素晴らしく美しいのよね〜。
そうそう、白壁は夕暮れの茜色にも映えるのですよね。
碧さんは春の地中海から笹倉鉄平の絵を思い浮かべるのか〜。今まで私の中では中央ヨーロッパの辺りのイメージだったんだけど。
elly→碧さん
2009/05/29 17:04
あぁ〜、サントリーニ。ellyさんの情感溢れる筆致の描写・・・私の心は現実に戻れなくなりそうです。
サントリーニは赴任してそれほど時間が経っていないときに行ったこともあり、味わい尽くすには程遠い感じでした。イアの夕日も「お腹がすいた」という子供達に合わせて食事をしている間に半分終わってしまったり(笑)。だからもう一度、訪ねたい島の一つなんです。
今日はellyさんの描き出すサントリーニに連れていってもらい、満ち足りた気持ちです。
以前よりファンだった路地シリーズ、ギリシャ編を書いてもらって嬉しい!

さらさ
URL
2009/06/06 10:42
「路地シリーズ」突然復活です。
ギリシャに行くと、やはり「路地心」(笑)が刺激されますね〜。
サントリーニにはギリシャ赴任後すぐにいらっしゃったのですね。まあ、確かに。お子さんにとっては夕陽よりもご飯が大事だ(笑)。
ギリシャは魅力的な島がたくさんありますから、私も環境客があまり訪れないような小さな島でのんびり読書とか、絵葉書のように美しい典型的なエーゲ海の島とか、いろいろ訪れてみたいです。さらささんと一緒だったら尚嬉しいな〜!
路地、アテネ編もそのうち書くと思います。
elly→さらささん
2009/06/08 16:21

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