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zoom RSS ギリシャの独立記念日

<<   作成日時 : 2009/05/08 00:00   >>

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画像中途半端になっている旅の話に戻ります。

3月末のアテネ滞在中、とあるハプニングに出くわしました。アテネ滞在はほんの数日間。それなのに全く下調べをしていなかった自分が悪いのですが、冬季には遺跡や博物館が毎日早い時間に閉まってしまうことはともかくとして、滞在中に国民的祝日が重なり、その日はほぼ全ての公共施設がお休みになってしまうことを全く念頭に置いていなかったのです。
冒頭「ハプニング」と書いたため、きっと悪い出来事に巡り合ってしまったと受け取られたかと思いますが、実際には、その予期しなかった祝日のお陰で、遺跡や博物館見学にも勝るようなエキサイティングな国民的行事に遭遇できたのです。
3月25日。その日は、ギリシャの独立記念日に当たりました。
「独立」が指すものは、オスマン帝国からの独立。ヨーロッパ諸国にとって「中世の暗黒」を生み出したオスマン帝国の広大な地域に及ぶ支配は、勿論のことギリシャにも大きな影響と心の傷、歴史上の負の遺産を多く生み出しました。特にアナトリアのすぐ隣に位置したギリシャにとって、また現在のトルコ共和国の領土にも過去たくさんのギリシャ人が住んでいた事情を持つギリシャにとって、オスマン帝国の残した痕は拭い去ろうと思っても拭い去れない過去であることが、政治的・地理的・文化的側面から多く感じ取ることができます。
きっと文化的な側面で言ったら(このブログでも何度も書いてきたように)、+(簡単に+か−かで書くのも本当はどうかと思うし、好きではないのですが)の側面も多々あったのだと思います。融合と拡散とにより、魅力的な文化が現れるのは歴史の常ですから。
が、独立に至るまでの茨の道、非常な難産の末の国家形成の過程を思えば、ギリシャ人が現在のトルコという国に対してさえ持つ幾ばくかのわだかまりのようなもの(実際には市井の人々からはその感情は殆ど感じられなかったし、多くの人が現在のトルコは「美しい国」だと思っていることが感じられたけれど)も容易に納得できます。勿論、現在の二カ国の間の不和は、オスマン朝時代にのみ帰するのではなく、むしろ共和国政府になった後にトルコで台頭したトルコ民族主義による影響が大きいわけですが。
しかし、トルコに対していずれの感情を持つにしろ、この3月25日という日がギリシャ人にとって、自らの民族の誇りと一体感を喚起させる意味でも大きな意味がある日だということが感じられ、この日にアテネに居られたことがとても意義のあることだったと思えました。
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この日、ギリシャの大都市では大きな規模の軍事パレードが催されました。
特に、アテネのシンタグマ(憲法)広場を出発し、オモニア広場までの大通りを練り歩くパレードは有名なよう。
この日アテネの街中は、朝早くから異様なムードに包まれていました。
異常な数の警官が街角に屯し、バリケードを張り、大通り沿いには進入禁止のロープが張り巡らされ・・・
事情を知らなければいったい何事かと思ってしまうような緊迫したムードが漂っています。
その一方で、白地に青いラインと正十字の入ったハンディサイズのギリシャ国旗を軒下に吊るしたペリープテロ(キオスク)や、同じように国旗を売り歩く南アジア系の人々の姿が多数見られ、国民的な行事が滞りなく行われるよう、街全体がパレードに備えている様子が窺えました。国旗を売っている人々の殆どが南アジア系の人々であることにも驚きました。13年前にギリシャを訪れた際には、移民の存在を意識することは殆どなかったのですが、今回ギリシャに行って(おそらく2004年のアテネオリンピック以降なのでしょうが)移民の数(アフリカと南アジアから)が大幅に増えていることに意識せずとも気付かされたのです。国旗を売っている人たちは間違いなく、この時のようにその日限りの仕事を見つけ、日がななんとか生活をしているという様子が見て取れました。ちょっと声をかけてみると彼らの多くはバングラデシュからの移民であることがわかりました。
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パレードのスタートは午前11時。それよりも1時間ほど前から、通り沿いは場所取りの人々でごったがえし始めました。私ももっと前から通り沿いのカフェで待機し、30分ほど前からは通りに並び場所取りを開始しました。
沿道には人人人・・・
特に子どもたちの興奮の様子が、通りの反対側からも手に取るようにわかり、熱気がこちらにも感染してきて、思わず身を乗り出してしまいます。
それもそのはず。この軍事パレード、軍事オタクならずとも、男の子なら少なからず大興奮してしまうようなエキサイティングなものでした。
それこそ、ギリシャ中の軍人や警官が総出演といわんばかりの大人数によるパレード。こんなにたくさんの軍人さんを見るのは後にも先にもきっと無いでしょう。
それに加え、腸をえぐり返すような戦車の地響き、戦闘機やヘリコプターが地上のパレードに合わせ上空を平行飛行。う〜ん、大迫力!!
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軍隊はと言えば、陸・海・空・(軍楽隊)と全て出揃い、加えて警官や海上保安庁・消防などの職員もパレードに参加。
自分の知り合いが見えたのか、辺りから一斉に歓声が沸く。いや、これだけの人数の「出演者」がいるのであれば、必ず誰か一人は自分の知り合いの行進に出くわすに違いない。
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そしてなんと言ってもこのパレードのハイライトは、シンタグマ広場にある国会議事堂前の無名戦士の墓を守る、伝統衣装チョリアデスを身に着けた衛兵さんたちの行進。この衣装、本当にかわいい。子どもたちの間にもこのチョリアデスを着けた姿がたくさん見られました。
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彼らの独特の儀式めいた動きは一見に値します。普段は決まった時間に無名戦士の墓の前で衛兵の交代式が見られますが、これだけ大人数の衛兵を同時に見られる機会は他にないはず。
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もちろん、子どもたちにとってこの独立記念日のパレードは、エンターテインメントであり、ある種の憧れを掻き立てるものであるのでしょうが、「楽しい思い出」と共に、国家に対する誇りや民族意識(必ずしも単一民族でないギリシャに関して「ギリシャ民族」という言い方をするのにはいささか抵抗がありますが)、歴史意識を形成していく上で、無意識の手助けとなっているのだろうなと感じさせられました。そして、これだけ国家としての「パワー」を見せ付けているにも関わらず、どうしたわけか、決して右翼的であったり国粋主義的になっていないいところも、ギリシャという国の懐の深さだと思わされました。(きっと、パレードを見る側の人々の明るさ・陽気さがそうさせているのでしょうね)
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ギリシャの人々の民族意識や歴史意識に関連して。
アテネの中心部には、独立戦争時の資料類を集めた国立歴史博物館が存在します。
アテネ市内には、先日ご紹介した民族楽器博物館を始め、実に多種多様な博物館がありますが、私はこの歴史博物館がとても好きなのです。13年前にアテネを訪れた際にも立ち寄ったこの博物館を今回再訪しました。
この博物館の主な展示物は、オスマン帝国からの独立戦争時の武器が多数を占め、それ以外には、オスマン軍からの戦利品や戦争に関する絵画・あるいはオスマン朝によるヴィサンティン帝国の支配(主にはコンスタンティノープルを舞台にした海戦の模様を描いている)、ギリシャ各地の旗・オスマン朝の旗などを収めていて興味が尽きません。(そういえば前回はオスマン軍によるクレタ海戦での虐殺の光景を描いた絵画があったように記憶するのですが、今回は発見できず・・・)

でも、何よりもこの博物館を印象付けるのは、この博物館を絶えず訪れる小学生の社会科見学(?)の集団。
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13年前にも出逢いましたが、やはり今回も上の写真のように熱心に先生の話に耳を傾ける子どもたちの姿に出逢いました。ギリシャ語が全くわからない私には、話の内容は知る由もありませんが、海戦の絵や、オスマン軍の甲冑などの展示されている空間に座って、おそらくギリシャの悲劇的な歴史や、古来からのギリシャの精神そのものである「自由」を勝ち取るという形での勝利について語られているのでしょう。
歴史教育には様々な形があると思うし、語られるべきこと、あるいは語られる際、慎重には慎重を記すべきことが多々生まれてくるでしょう。
アテネで目にするこういった子どもたちの居る風景を見て、あるいは先の軍事パレードの様子を見て、自ずとトルコの側ではどういう歴史教育が行われているのだろうな、と興味が湧いてきます。
(トルコはトルコの側で、失われた「栄光」のようなものと、その喪失感と、帝国の陰に苛まれているのかな・・・)

古代ギリシャも興味深いし、大好きだけれど、現代のアテネも実に様々なことに思いを巡らす機会を与えてくれる街だなあと思います。

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コメント(6件)

内 容 ニックネーム/日時
こんにちは〜!
わお、ギリシャのイケメン衛兵さんたちがこんなに
沢山!!!素敵ぃ〜!(←見る所はこんな所ばかり^^;)
それに、仰るとおり、これだけの戦車を見てしまうと、過去の痛い記憶を思い起こしてしまう日本人の私ですが、ギリシャの人々はそれをすぐに国粋主義だとか右翼だとかの象徴と捉えないというのはいいことですよね。羨ましくさえあるような気がします。
特別な日になって本当によかったですね☆
yuu
2009/05/09 16:53
お越しいただき、ありがとう!
「イケメン衛兵さん」(笑)確かに。
私は衣装にばかり目が行ってましたが(笑)←制服好き
そう、ギリシャ人のあの「さらり」とした感じがとても好感が持てるのです。もちろん表面的な部分だけ見たらわからないこともたくさんありますが、基本的にはとても明るい人たちなのだと・・・。同じことを我が国(今いる国って意味です)でやったら、ずいぶん違った色合いになると思います。(実際にやってますけど)
お祭りもそうですけど、こういう特別な行事に当たると、なんとなくその国が近く感じられるから不思議です。
elly→yuuさん
2009/05/10 15:03
独立記念日に遭遇できたのもやはりellyさんがギリシャと深い縁があるからなのでしょうね。旅行がギリシャの祝日にあたると遺跡や博物館、商店などが全て休みで何もできないような状況も多々起こりうる中で、アテネの中心部に居てその行事を楽しめるというのは独立記念日だけかもしれません。
復活祭やクリスマス、清月曜祭りなどは実際に住んでいないと体験するのは難しいですから。
かくいう私は諸事情により、この独立記念日のパレードを見る機会がなかったのです(涙)ということで、記事はとても興味深かったです。
ギリシャ人の民族意識を形成するような行事が国粋的になっていないし、苦難の歴史がありながらそれを捉える心の在り方が基本的に明るいという印象、11月に行われるオヒデー(イタリア侵攻にNOを突きつけたという記念日で、規模の小さなパレードが行われます)で私も感じました。
歴史博物館も好きで何度か訪ねました。ギリシャの博物館では子供達に会うことが多いですよね。考古学博物館でも何度も見かけました。教科書で習うだけよりも深い理解が出来るわけですから、うらやましい限りです。
さらさ
URL
2009/05/13 14:31
さらささんからのコメントを読んで、旅行中、独立記念日にあたったのはつくづくラッキーだったのだなと、改めて思いました。
さらささんの文章を読んでいていつも、ギリシャの宗教的な行事もいつか見てみたいとずっと思っていました。でも、それには実際に生活をして、その街の空気や季節感も含めてその行事を感じることが不可欠だなと思います。
オヒデーのパレードをご覧になって、私と同じように感じられたとのこと。やはりギリシャの国民性なのでしょうか。ギリシャ人のそういった部分が、旅人に対するやわらかい態度にも表れているような気がしてなりません。ギリシャってとにかく旅人が気持ちよく過ごせる国ですね!
そうそう、博物館や遺跡、いつも子どもたちのグループで溢れていますね。歴史をあんなに身近に感じられる環境にあることは良いことだと思います。歴史だけでなく、子どもたちに対する神話教育も発達しているという話も、以前されてましたものね!
elly→さらささん
2009/05/14 03:26
衛兵の交代というと、ロンドンはバッキンガム宮殿を思い出しますが、こちらも衣装といい素敵ですね♪

しかも、子供の衣装がなんとも可愛い!

マーク
2009/05/26 20:49
バッキンガムの衛兵交代式も見てみたいなあ。
イギリスって行ったことないんですよね。絶対好きなはずなんですが。
子どもが着ていると、この衣装、本当にかわいいです。でもムサイ男の人だと・・・。普通の軍服の方がいいような。
けっこう軍服に弱い私でした(笑)
elly→マークさん
2009/05/27 14:52

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