「ジプシーを巡る旅」もトルコ編を終え、いよいよイランへ入ります。すみません、まだしばらく終わらないんです(笑)。半月ほど前に「ジプシーを巡る旅」の導入部分を書いた際、関口さんにとってトルコに続きイランもまた2回目の調査・取材旅行となった旨を記しました。また、今回のイランの調査では、驚くべき発見があったとも記しました。それは、ジプシー研究においてイランがとても重要な地であるということを自ずと納得させてくれるような出来事でした。 と同時に、なかなか困難が相次ぐ旅となったことも事実としてここに述べておきたいと思います。少なくとも、トルコでの旅のスタイルとは全く違うものになったことは間違いありません。 その「困難さ」の原因は、「ロマ」という人々と向かい合うこと以前に、イランという国、またイラン人と関わりあうことの中に多く潜んでいたように思います。(ここでは「イランに住む人」という意味で便宜的に「イラン人」と言っておきます。もちろん、「イラン人」にはイランに住むロマも含まれます。) 実際、イランのようにいわば「閉じられた国」で情報を集めるのはかなり困難を極めることだし、社会制度が非常に混乱しているこの国で、前もって周到に計画を立てて行動することはほぼ不可能。調査旅行に限らず一般の旅行においてさえも、個人で全てを行おうと思うととんでもなく大変な目に遭うこのイランという国で、如何に効率良く物事を運んで行くか、如何に時間を有効に使うか、そういったことにも多くのエネルギーを費やした旅となった気がしています。 実際、日本にいると、当たり前のことだけどイラン国内の事情なんて殆ど見えてこないものだと思います。だからこそ、日本からイランに遊びに来てくれる友人たちには、「あまり周到に計画を立てても意味がないよ。こっちに来てから考えた方がいい」という旨を今まで伝えてきました。 全てが「インシャアッラー」の世界だって言ったら大袈裟な気がしますが、計画を立てていると、うまく行かなかった時にむしろ損をした気分(笑)になるというのが事実な気がします。 その点、いつも取材先の事情はその場に行ってみないと解らないゆえ、思っていたことの半分ぐらいうまく行けば良いという関口さんの旅のスタイルは、私にとっては随分気楽だったと言えると思います。 と、ここまで、イランという国についてネガティブなことばかり書いてしまったわけですが、実際、あまりに時間の感覚が違う彼らのペースに巻き込まれ、振り回され、何の成果もなく調査が終わってしまうんじゃないか、と悲嘆に暮れそうになったまさにその時に、物事が急に好転したりとか、驚くべき情報が上から降って来たりとか(まさに天の恵みとしか言いようがない!)、イランでの調査はそういったことの繰り返しでした。不思議なことに、今回の旅だけでなく、今までも(日常生活でも)そうだったのですが、「あー、もうダメだ」と思っても最後にはなんとかなってしまっているという国、それがイランなのです。摩訶不思議の国イラン。でも実際には、最終的に紛れもなく、「人」が手助けをしてくれているわけですよね(実際、イラン人は親切な人が多いのも事実)。 今回の旅も、多くの人と関わり、彼らに振り回されもしたけど、同時に彼等から大きな助けを得られたことによって、取材は成功へと導かれたんだと思います。 と、前置きが長くなってしまいましたが、じゃあ、実際にイラン国内でどのように取材のきっかけを作ったかを、今日は簡単に述べておきたいと思います。 トルコでは、コーディネートと通訳の双方を務めてくれたMくんという存在がありました。 一方イランでは、ガイドとして、なんとロマ自身が全行程同行。しかも2人! テヘランに住む(テヘラン市内と郊外)アリレザ ザルギャルとヌスラトゥッラー(通称ヌスラット) ザルギャルの二人。 この二人は従兄弟同士という関係にあります。イランの旅の前半は、彼らの親類を訪ね、話を聞くことが主な取材の成果となりました。 本来なら彼らとの出逢いについても記さなければならないと思うのですが、それをやると長くなってしまうので、今日は述べません。ただ、関口さんは、ヌスラットとは既に2年前の調査旅行の際に知り合われていたということだけ、ここに述べておきます。この辺りの事情について(ヌスラットについて)は私の過去記事(『ジプシーを追いかけて−アラブ世界のジプシー』 )にありますので、ぜひ参照してほしいと思います。 ![]() ヌスラットは地主(農業も行っている)であると同時に音楽家でもあり、去年イラン・トルコ両国で大々的に祝われた「ルーミー生誕800年記念」の行事の一環として、トルコのコンヤで行われたコンサートにも招かれ演奏しています。そして、2年前の関口さんの報告で驚いたことのひとつなのですが、ヌスラットはイラン国内のみならず中東全体のロマのリーダーであるということ。また、アリレザの方はビジネスの傍ら、自らのルーツに関する研究に勤しむインテリ系のロマ。2005年にイスタンブールで開催された国際ロマ会議にも出席し、重要な発言をしています。しかし、彼らのこの「ルーツ」へのこだわり・執心が、私たちを今後非常に悩ませることになるわけです。この辺りのことは後々少しずつ書いていきたいと思います。が、以上の記述だけでも、ザルギャル・ファミリーが非常に恵まれた境遇にいるロマだということは理解して頂けるかと思います。 ただ、今の時点ではまだイランのロマについて未知の部分が多いこと、ブログ上で書けることはほんの限られたことだけだという点、どうぞご了承ください。 ブログでは主に「ジプシーとの珍道中」について書いて行きたいと思っています。この内容だけでも、十分イランのロマ(あるいはイラン人か?)の特性についてお伝えすることができると思っています。 というか、主にヌスラットの「天然」ぶり(あるいは「芸術家魂」とも言える)について書いていくことになるかも(笑)。 写真1:旅に持参したマイ・チョグールを、ハーフェズの詩に合わせて演奏するヌスラット。シーラーズのハーフェズ廟にて。「チョグール」は、主にホラサーン地方やアゼルバイジャン地方の民謡で使用される、クルドのタンブールと親戚関係にある弦楽器(・・・らしい)。 写真2:中東全体のロマのリーダーにふさわしい哲学者然とした風貌だが、実はとんでもない「すっとぼ」爺さん(笑)であることが、旅を通し徐々に判明していくのだ!しかし、私にはヌスラットはかなりツボでした(笑)。仲良くなったし(笑)。 |
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| タイトル (本文) | ブログ名/日時 |
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| 内 容 | ニックネーム/日時 |
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ロマがイランにいるということだけでも、未だ漠然としていますが、これがエジプトにもいるのは確実で、その影を目撃した私は、ただただ今、「変な気分」です(笑) |
碧 2008/04/17 15:37 |
イランのロマは、かなり謎に満ちています。まだその深遠なる世界の入り口に立った感じ・・・でしょうか。 |
elly→碧さん 2008/04/17 21:45 |
何かばたばたしていて久々のコメントです^^ |
Homayun URL 2008/04/18 01:39 |
こちらこそクルド音楽のシリーズなど楽しく拝見させて頂いてました(しかしYouTubeにアクセスできないのは本当に残念)が、何かと気忙しくコメントをなかなか残せずにいます。いつもコメントを頂いてばかりで申し訳ありません。イランの取材の成果については、二人のザルギャルを中心に少しずつお話させていただきますが、まずはチョグールですよね。この楽器、実は8弦の2コースとなっていて、それぞれ3弦(1)5弦(2)なのです。それから、音楽的特徴についてですが、ヌスラット(ヌスラットっていう名前にはやはり反応してしまいますよね!)の演奏曲は主に自作曲だと思います。それにペルシャの神秘詩、あるいはロマニー語・トルコ(アゼリー)語の詩を乗せて歌っています。 |
elly→Homayunさん 2008/04/18 04:36 |
音楽的特徴を述べるのは私の知識では非常に難しいのですが、このチョグールという楽器は通常、やはりトルコ系の音楽であるアゼルバイジャンのアーシェク音楽に、バーラーバーンと共に用いられているのではないでしょうか?実際、関口さんが約2年前に収められたヌスラットたちの演奏の映像でも、やはりチョグール&バーラーバーン&ダーイェレという組み合わせでした。今思えばその時の曲は、東アゼルバイジャンのアーシェクの影響を受けているように聴こえなくもありませんでした(すみません。アゼルバイジャン民謡について殆ど解らないのですが)。この辺りは当然のことHomayunさんの方がお詳しいですよね。また、クルド音楽との関係については全く解りません。タンブールと親戚関係にある楽器だと言われる理由もピンと来ませんし。でも辞書等で引いても、確かにチョグールはタンブールの流派を組む楽器という風に書かれているんですよね。(はたしてりーずさんはどう思われますか・・・) |
elly→Homayunさん(続き) 2008/04/18 04:38 |
ご返信有難うございます。クルドのシリーズは、ナーゼリーさんのライナーノーツ(キングの新シリーズ)執筆がありましたので、下調べ兼ねてやっておりました。まだまだ分からないことも多く、大変に興味深い状況の内に取り合えず終わりにしました。りーずさん、keikuさんにはクルド情報で大変お世話になりました。 |
Homayun URL 2008/04/18 22:18 |
チョグール&バーラーバーン&ダーイェレ> |
Homayun URL 2008/04/18 22:18 |
こんにちは! |
メギー URL 2008/04/18 23:57 |
再度書き込みをありがとうございます。いつもHomayunさんの専門的な視点から綴られた言葉を拝読することにより、世界が何倍にも広がっています。改めてお礼申し上げます。 |
elly→Homayunさん 2008/04/20 19:14 |
そして、やはりあの楽器の組み合わせはアゼルバイジャン的なのですね。ヌスラットが奏でるオリジナル曲(?)には、吟遊詩的な要素が多分に見られると思います。やはりアーシェクの影響ですかねえ。今度会ったら確かめてみます。チョグールの演奏が入ったCD等、まだ見つけたことがないのですが、これから注意して見てみようと思います。ブーシェフル音楽の映像もユーチューブにあったらおもしろいですね! |
elly→Homayunさん(続き) 2008/04/20 19:20 |
お越し頂きありがとうございます。また、過去の記事まで遡り読んで頂いて恐縮です。 |
elly→メギーさん 2008/04/20 19:36 |
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