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zoom RSS ジプシーを巡る旅(都市の抱える矛盾)

<<   作成日時 : 2008/04/08 21:45   >>

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画像アンカラにあるジプシーの集落の情報を花屋と靴磨きから得た私たちは、早速に車での移動を開始しました。
その日の行動の詳細な記憶が今となっては私の中で曖昧になってしまったのですが、まずは集落があると聞いた地区、フドゥルク・テペ(「テペ」はトルコ語で、「丘」)という場所へ向かいました。
丘の麓に事務所を構えたフドゥルク・テペの長(この地区の行政上のチーフ。ジプシーではありません)は、我々を暖かく迎えてくれました。そこで情報収集が始まります。

このフドゥルク・テペという地区は、丘の斜面に沿ってぎっしりと集落が密集する地域なのですが、ここでの暮らしや環境が容易でないこと、また様々な問題をはらんでいることは、長の話を聞かずとも、ある程度想像が出来ます。この地域には、東から移って来たクルド人が多く住み着き、彼らの多くには職もなく、少なからず問題も起きている様子でした。
そしてこの「丘の街」では、トルコ政府の近年の政策により、古い家屋が撤収され、高層マンションタイプの公団系の建物が次々に建てられている、まさに建設ラッシュの様相を呈していました。
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しかし、一歩奥に踏み入れば、以前として古い家屋が軒を連ねている狭い路地を私たちは徘徊することになるのです。アンカラの丘の路地裏に残る、今にも崩壊しそうな古い家屋群(多くは一部木造)と、統一化された高層マンションが織り成す風景は、なんとも不思議な印象を私の中に残すことになります。
高層マンションの建設ラッシュはイスタンブールでも同様に起こってるようでしたが、そこではアンカラほどの「矛盾」は孕んでいないように思われました。

フドゥルク・テペで話を聞いた後、そこで教えてもらった、ジプシーが住むというギュル・テペというマハッレ(集落)に私たちは向かうのですが、その場所も勿論のこと開発の対象となっていて、同じように古い家屋と新しい高層マンションがひとつの不思議な光景を作り出している状況に出くわすことになるのです。
そして、ジプシーたちの集落が控えるギュル・テペでも、やはり「住まい」の問題は起きていて、実際には、多くのジプシーたちが近年住みかを失っている様子でした。

ギュル・テペの長を訪れた時は(自宅へ突撃訪問!)、ちょうど昼食の時間帯(しかも休日の)だったわけですが、チーフであるI氏は、嫌な顔ひとつせず事務所へ出向き、インタビューに答えてくれた上、ギュル・テペに住む一人のミュージシャンを私たちに紹介してくれました。チーフ自体はこれまたジプシーではないのですが、このミュージシャンとは友人同士だと言うのです。
この後訪れることになるカレという地区(「カレ」はトルコ語で「城塞」の意で、文字通りアンカラ城のすぐそばにある地区)のチーフが特にそうだったのですが、ジプシーが住む地域の長が、自らの地域に住むジプシーのみならず、他国のジプシーや彼らの過去にも関心を示す様子が、とても新鮮に思われました。自らの行政地区の住人に対する責任感のようなものが、いずれのインタビューにおいても、言葉の端々から感じ取られた気がしています。尤も、現実にはどう対処しようもない問題が山積みなのだと思いますが。

さて、その後、ギュル・テペの長に紹介されたミュージシャンに連れられ、私たちは彼の自宅を訪れることになります。
ミュージシャンであるC氏は、主に結婚式などで演奏活動を行っている様子。彼の担当楽器はズルナとネイ。
自宅で数十分間に渡るインタビューと演奏が始まりました。
屋内でのズルナの耳をつんざく爆音と、対照的なネイの内省的なメロディーを双方楽しみ、彼の家を後にします。
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C氏の暮らし向きも勿論全く楽ではないわけですが、きれいに掃除と整頓が行き届いた部屋からは、不思議と悲壮感は漂ってきませんでした。
余談ですが、トルコやイランでは、どこを訪れてもその先々でチャーイでもてなされるわけですが、このお宅では、この旅で唯一トルココーヒーでのもてなしを受けました。あのドロドロのコーヒーで有名な国、トルコのはずなのに、意外にも他の場所では全て、供されたのはチャーイだったのです。いずれにしろ、全くの下戸である私には、イスラーム圏の「ノンアルコールな」もてなしは大変有難いわけですが。
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ギュル・テペからの帰り道、関口さんと私は車を降り、丘の麓に程近い場所にある集落(ジプシーのではない)を徒歩で巡ってみました。くすんだ蒼や若草色の漆喰で塗られた軒の低い家屋の壁、瓦が半分ぐらい落ちた状態で放置されたままのトタン屋根、複雑に組み合わされたでこぼこの石垣、狭い路地を抜けると見えてくる向かいの丘の積み木状の家並み。そういった風景の全てを著しく特徴付けているのは、ただどこまでも続く静寂のみ。真昼であるにも関わらず人の気配が殆ど感じられない、野良猫のみが徘徊する静まり返った集落での「散歩」は、これまた不思議な余韻を私の心の中に残すことになりました。

写真1:ギュル・テペの家屋と高層マンションが織り成す風景。
写真2:フドゥルク・テペ麓近くの集落(ロマではない)に残る木造家屋。
写真3:ミュージシャンC氏のズルナとネイ。
写真4:これまた麓の集落入り口付近の風景。








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コメント(6件)

内 容 ニックネーム/日時
う〜ん、普通のツアーでは見れそうにない、あるいは掘り下げられそうにないポイントですね。
戦後、全てを失って、一斉に立ち上がることになった日本とはやはり違いますね。むしろ、こちらのパターンの方が多いのかもしれませんが…おそらく、中国でも今同じような状況が広がっていることと思います。古い歴史を持つ国に訪れる、急激な?開発の波。波乗りできるもの、できない者の差が広がるのを、いかに食い止めるのか…難問山積なのですね。
yuu
2008/04/09 22:54
yuuさんがおっしゃるとおり、中国とは似た状況なのでしょうね。急激な国の成長が生み出す矛盾、格差。観光都市イスタンブールでは、史跡が残る旧市街においては古い建物も綺麗に保存され、新市街にはオフォスビルが立ち並び、少し中心から外れた地域ではマンション群が立ち並び・・・と、わりと整然と区域分けが出来ている印象だったので、アンカラの街の様相は、不思議に映りました。こういう光景、高層マンションが立ち並ぶテヘランでも、なかなか見られない気がします。
elly→yuuさん
2008/04/11 18:13
 ごぶさたしております。圧倒的ボリュームの日記群に、いったいどこにコメントを付けてよいものやらわからぬまま、取り合えず憧れ楽器ネイが登場するこちらに・・・。

 それにしても本当に貴重な体験を(それも怒涛のごとく)されていますねえ。すごい、羨ましいを越え最早、正直ちょっと妬ましくすらあります(笑)。
 語学力、予備知識に裏打ちされた旅の記録、生の体験記のなんと胸に迫ること。読んでいるだけの私にもellyさんの言いたいこと、言い切れないことの一端が伝わってくるようです。

 続きに期待してます!!
えひ山
2008/04/13 00:09
こちらこそ随分ご無沙汰してしまって。
それに、すみません・・・一度更新し始めると、止まらない性質で。このアンバランスさ、いい加減にしてくれって感じですよね。
それにしても、「妬まれて」しまっているのですね、私(笑)。場所がトルコということで、えひ山さんはトルコの音楽が大変お好きだし、造詣も深いので、こういうシチュエーションに置かれたら、きっと私の数倍は得られるものも多いことかと思います。(私、ほんとトルコってあんまり聴いてなかったんですよ)
旅日記を丁寧に読んでいただけていること、とても嬉しいし、大感謝です。
「言い切れない」部分、本当にたくさんあります。なので、ぜひ「ラティーナ」の関口さんの連載を読まれてください!(笑)今月20日発売の号から始まります。
あ、トルコと関口さんとえひ山さんと私、と言えば、「ラマダンの夜」を思い出しますね!(笑)
elly→えひ山さん
2008/04/13 16:42
 ほんとですよ〜、関口さん&「あの」DoubleMoonのスタッフの方とともにトルコ旅だなんて、もう卒倒するくらい妬ましい!!(爆)

 ラティーナ、関口さんの目にはこの旅がどう映っていたのか興味津々なので必ず読みます!
 
>ラマダンの夜
あっ、ほんとだ♪
えひ山
2008/04/13 20:08
DoublemoonのMくんは、旅の「友」としても素晴らしい人でした。若さと成熟が同居した、不思議に素敵な青年でしたよ。今ごろはフェスの準備等で忙しくしていると思います。日常のふとした時に、Mくんのことを思い出したりして、すでに懐かしい感じです。
ラティーナ、ぜひ読まれてみてくださいね!
先日、久しぶりにメルジャンの写真を見て、にやけてしまったellyより。
elly→えひ山さん
2008/04/15 22:07

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