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zoom RSS ケルマンシャーへの旅

<<   作成日時 : 2007/11/16 07:27   >>

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画像また間が開いてしまいました。
私が生活を始めた当初、日本より一足先に秋を迎えたと思っていたテヘランだけど、その後、深秋の訪れを告げる雨も降らず、まるで季節が止まってしまったかのような日々が続いていました。先日、そんなテヘランを抜け出し、イラン西端部の山岳地帯に位置するクルド人の街ケルマンシャーへ、短い旅に出てきました。
旅路を一緒に歩んだのは、歌い手の慶九さんとセタール奏者のKさん。
この旅の主な目的は、慶九さんのお友達であるクルド人音楽家のファミリーが、ケルマンシャーのサフネという小さな街にアートスペース兼結婚式場を開かれたため、そのオープニング・セレモニーに出席するというものでした。

今回の旅は、旅の友も濃ければ過ごした時間も濃厚なもので、私が今まで経験してきた数々の旅の中でも、一生脳裏に焼きついて離れないだろう風景と音にたくさんたくさん出会ってきました。
第一、ケルマンシャー行きの飛行機に、あのホセイン・アリザーデさんが同乗したのですよ!
機体がとんでもなく古いことで悪名高いイランの飛行機にビビリながらも、(経済制裁を受け続けているため、新しい飛行機を買えない。その古さと言ったら、故障の際、もはや替えの部品さえも手に入らないぐらいなのだそうです。)アリザーデさんと一緒だから落ちる心配はないよね!なんて、変な願掛けをしたり。
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到着したケルマンシャー(正確にはサフネ)は、文字通り四方を剥き出しの山々に囲まれた、荒々しい土色の地。厳しい自然環境ながらも、ほどよく小さくまとまった街並みと、車の殆ど通らない閑散とした道路は、テヘランのような大都会から来た身には、ほっとさせられるものがありました。特に夕暮れの中ローズピンクに染まる山並みは美しく、素朴さと懐かしさが相まった光景は郷愁を誘い、迫り来る闇に向かって何かを叫び出したいような、そんな衝動に思わず駆られてしまった。私ってやっぱ都会の風景よりも自然が街の端まで迫ってきているような、そんな光景の方が好きなんだなって、改めて思った。しかもそれは、緑溢れる優しい風景ではなく、光と陰が荒々しく交差する土色の光景でなくてはならない。

ほぼ単色で完結している素朴ながらも力強い光景の中に、やはり同じ色で統一された日干しレンガの壁や家々が軒を連ねている小さな街、それが私のサフネの印象。
宵闇も迫る頃、その小さな街に出現した豪華なアートスペース「ザマーヴァン」で、オープニングの宴が始まりました。

オープニング前にも何度かこの場所を訪れていた慶九さんは、オープニングまでの経過をクルド人のご家族と共に見て来られていただけに、感慨深いものがあったようです。
その想いは、初めてこの場所を訪れた私にでさえ、溢れるほどに伝わってきました。
それは、セレモニーで暖かいスピーチを展開されたクルド人ファミリーの父であり、このスペースのホストであるYさんの表情から。あるいは、Yさんの息子さんのSさんとPさん兄弟のタールとトンバクの演奏から。家族を見守る親戚や地元の方々の暖かい視線から。
そして、このセレモニーには、アリザーデ氏も駆けつけスピーチを披露されました。
氏は、このスピーチのためだけにテヘランから飛行機でやってきて、その日のうちにまたテヘランへ帰るというスケジュールだった模様。Sさんがかつてアリザーデ氏のお弟子さんであったことや、アリザーデ氏とこのご家族との間に深いお付き合いがあることを考慮しても、やはりこれってスゴイことだって思わされた。氏のスピーチにも、Yさん家族を労う暖かい言葉や、芸術に寄せる熱い想いが込められていました。
そしてなんと、私たち異邦の(!)旅人3人組は、アリザーデ氏とお茶をしながら言葉を交わすという贅沢な時間まで過ごすことが出来たのです!
音楽家の慶九さんとKさんは、以前にもアリザーデ氏と言葉を交わした経験をお持ちだったけれど、私には巨匠を間近に見るのも初めての体験で。ただただ緊張と感動が相まってしどろもどろ。将来、氏と音楽について語れるほどのペルシャ語力と音楽の知識を蓄えたいって、強く強く感じさせられる体験となりました。
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さて、セレモニーで演奏を披露したのは、先に書いたタールとトンバクの兄弟デュオ、クルド音楽のグループ(グループ内にタンブール奏者が3人もいた)、高齢の音楽家二人によるソルナとドホールのデュオ、という3組。すべてクルドの音楽家だったけれど、バラエティーに富んだ出演者の選択で、一言でクルド音楽と言っても様々な音楽の形態があることをつくづくと思い知らされました。中でも、慶九さんから常々「天才だ」と聞かされていたSさんのタール演奏は、出演が急に決まったため練習時間もなかったと言われながらも、本当に素晴らしいものでした。
Sさんは、タール以外にも弦楽器は何でもござれのマルチな演奏家であり若き天才音楽家。テヘランに戻ってきた後、以前慶九さんが撮られた彼の演奏シーンの映像を見せてもらったところ、弦楽器バグラマの演奏と共に歌まで披露されていて、その深い歌声にいたく感動してしまったのでした。
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セレモニーの後は、参加者等と共に祝の食事。
しかし、宴の席に少し遅れていったKさんと私は、祝いの席で饗される羊の丸焼きの「残骸」を目にし、愕然としたのであった。ところ狭しと並んだご馳走ビュッフェの前には人だかりが出来、なかなか中心部に近づけない!私達は人と人の波を縫って、細々と食事を摂ったのであった・・・。しかし前菜系のものからデザートまで全て美味しかった!ちなみにここでシェフを勤める方は、以前テヘランの有名ホテル、Eホテルで勤めていた方だそうです。
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この日の夜は、「女子寮」と「男子寮」に別れて宿泊。女子寮は、アートスペースの近くにあるクルド人ファミリーのお宅でした。
イラン国民が夜遊び好きなのは以前からうすうす感じてはいたけれど、この夜も例外ではなく、女子寮では夜中の3時近くまで飲めや歌えやの大宴会が催されました。但し、供されたのはお酒ではなく、チャーイーですし、どんちゃん騒ぎが行われたわけでは決してありません。
例えばクルドの叙事詩が、Sさんのご両親であるYさん(父)のタンブールとSさん(母)の歌とで演奏されたり(Yさんは例外的に女子寮入室が許された!ご夫婦での演奏ということもあり、とても愛情溢れる演奏で、聴いていて涙が溢れそうになった)ハーフェズの詩が歌い手A先生により朗誦された後、A先生自ら内省的な歌を披露されたり、イランの一民族ガシュガーイーの姉妹により、ポリフォニックで牧歌的な民謡が歌われたりと、知らず知らず深い瞑想状態に引きずり込まれるような宴が延々と続いたのでした。慶九さんもみなさんにせがまれ、得意とされる北インドの歌を披露されました。
テヘランからやって来たことと、セレモニーの後で疲れてはいたものの、ずっとこの宴が続いてくれたらどんなに良いだろうって、心から思いました。
終いには輪になって、クルドの結婚式などで踊られる舞をみなで舞い、大団円へ。
音楽家や芸術家ばかりが集まるこのファミリーならではと言ったところか、ダフとトンバクを即興で演奏し、そのリズムに合わせて楽しげに旋回する色とりどりの洋服を着た女だけのクルドの舞はとてもかわいらしく、おまけに通常は手にハンカチを持って舞うものを、ハンカチの代わりに即興的にティッシュペーパー(!)を持ち、それをヒラヒラさせながら舞うという、ちょっと微笑ましい光景を、私はしっかりとこの目に焼き付けたのでした。

宴の後の女だけの雑魚寝も楽しかったし、大人数での朝ごはんも大家族みたいで賑やかだった。
宴の翌日、ケルマンシャー近郊にあるアケメネス朝ペルシャ時代のレリーフが残るビーソトゥーンまでみんなで足を延ばし、岩山に登ったのも楽しい時間だったし、その高みから見渡したクルドの山並みも壮大で美しかった。(トップの写真)
帰りの飛行機の便が予約できなかったため、日も暮れ気温がおちていく中、2時間近くもテヘラン行きのバスを待った末に結局バスに乗ることができず、タクシーでテヘランに戻ることにした我々の帰りの珍道中も良き想い出。
何より、慶九さんとKさん、お二人の音楽家と一緒に旅を出来たのは、私にとって大変貴重な経験。多大な刺激を受けました。


最後に・・・
サフネのアートスペース「ザマーヴァン」の裏庭に出現した巨大タール型噴水。
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将来的にはさらなる改良が加えられ(?)、観光名所になること間違いなし!
先物買いが好きな方(笑)、ぜひザマーヴァンへ!
ちなみにこのオブジェのデザイン・設計を担当したのも、音楽家Sさんだそうですよ〜。









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コメント(12件)

内 容 ニックネーム/日時
美しい景色だね。

日本は今日から冬支度。
急に冷えてきました。
マフラーと手袋を出したよ。
mondo
2007/11/16 23:29
本当に素晴らしい景色の所ですね。2枚目の町の風景がとても良い感じです。かなり乾いてそうですね。ケルマンシャーと言えば、ナゼリさんや往年のエラーヒさんも、ここの出身ですね。
私も2004年の来日の際に、アリザーデさんご一行と食事したりしました。マイミクのウィリアムさん、コボリさんも一緒で、3日間仕事そっちのけで(夜に猛烈な勢いで片付けました)3人で金魚の糞のようにくっついて歩いていましたw
純邦楽にご関心がおありなようでしたので、一枚プレゼントしました。気に入っていただけたでしょうか。三味線が多目のものを選びました。
Homayun
URL
2007/11/17 20:01
 楽しく有意義な旅のようで、何よりです。折角のイラン住まいですから、あちこちへ・・・でも、行き先はくれぐれも慎重に選んでください。中村さんはまだ帰ってきません。
筑紫万葉
2007/11/18 10:30
スペシャルな旅でしたね。普段の疲れが吹き飛んだのでは?
こちらは寒くて、何もしたくありません。冬眠したい今日この頃。
ellyさんの現地情報と旅情報を、今まで以上に楽しみにしています。というのも、中村さんが帰ってこないので、私のイラン計画は、大反対されているのです。(家族は問題ありませんけどね)
「こうして旅をして、写真もとれるぐらいなんだよ!」と、多くの人へのメッセージです。
それにしても日本人は、本当にイランとイラクを混同している人が多すぎて辟易します。
aoi
2007/11/18 17:19
なかなか一人で小旅行は難しいかもしれませんし、楽しい旅行ができてよかったですね!!
泊り込みで音楽三昧!わいわい楽しそう〜♪
さすがに疲れて少し眠れましたか?興奮して眠れなかったかな?(*^o^*)
wacky
2007/11/20 11:12
日本も寒くなってきたようで。テヘランはまだまだって感じです。ご存知のようにイランでは、女性はコート着用が義務。コートの脱ぎ着が外出先ではできないので、これから冬に入り、あったかい室内(自宅はともかくレストランなど)と外での体温調節が難しそうで、悩みの種です。(それでも、イラン人の女性はうまくやってるので、街中を歩いている人を見て参考にしますが)
elly→mondoさん
2007/11/20 17:44
私の写真はいまいちなのですが、本当に雄大で素晴らしい景色でした。クルド民族の勇猛果敢な性質が育まれた背景が、手に取るようにわかる気がしました。ケルマンシャー出身のミュージシャン、本当に多いですよね。そして、このサフネは中でもミュージシャンが多い街のようですね?ZeAmiさんでも扱われている、MahoorのOstad Amrollah ShahebrahimiのCDを、今聴いています。クルド音楽にはまりつつあります。
アリザーデさん来日時のエピソードはHomayunさんならではですね!プレゼントされたCD、必ずや気に入られたに違いありません。アリザーデさんの三味線演奏も聴いてみたい気が・・・。
elly→Homayunさん
2007/11/20 17:51
お久しぶり!
そう、折角多民族国家イランにいるのだから、いろんな地域を訪れ、様々な言語や音楽、文化に触れる機会をなるべく作りたいんです。時間は限られているので、有効に使ってたくさん旅をしたい気持ちでいっぱいなのですが、例の事件もさることながら、女性ひとりでの旅に対する視線はやはり冷たいようです。他の国だったらとっくにいろいろ一人で周ってるんだけどな〜、なんて。
elly→筑紫万葉さん
2007/11/20 17:54
aoiさんのイラン旅計画がうまく行く事を、私もただひたすら祈っています。女性ひとりでのヴィザ申請に関しては、やはりいろいろ問題がありそうですが。旅のお供が見つかるのが一番ですよね!aoiさんほどイランに想い入れを持ってくださっている人には、絶対にイランを訪れてみてほしいと思います。そして、イランの美しい部分や素晴らしい文化を、ぜひその文才でもって伝えて欲しいと思っています。
イランとイラクを混同することに関しては、いい加減なんとかしてほしいです。中東を知らなすぎ!
elly→aoiさん
2007/11/20 17:57
そうなの、一人旅はやはり難しいかも。(それでも、やってる人はやってますが。私には今それができない立場のようなものもあり・・・)
この夜は、うん。やっぱり興奮しすぎて眠れなかった(笑)。あの濃い〜体験をまたしてみたいです。
(メール少し遅れそうですが、必ずします・私信)
elly→wackyさん
2007/11/20 18:00
「アリザデさんが本当にケルマンシャー行きの飛行機に乗るか?」とか、「乗り遅れたりして」とか、私たちジャーポニたちが勝手に彼の背後で想像をたくましくしてたのが、自ら面白かったです。エヘ。
また一緒に旅にゆきましょう!
k9
2007/11/22 13:42
アリザーデさんにまつわる四方山話?は、今後けっこうネタになって登場しそうです。しかし、私たちの妄想?の中で、アリザーデさん「お茶目キャラ全快!」になってたね!
それにしても無事ケルマンシャー行きの飛行機に乗ってくださってよかったです(笑)。
k9さんのお陰で本当に素晴らしい旅の時間を持てました。改めてありがとう!
elly→k9さん
2007/11/23 01:14

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