ETHNOMANIA

アクセスカウンタ

zoom RSS カイロとオランの夜に酔った!(百人町音楽夜噺)

<<   作成日時 : 2007/02/27 01:12   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 10

先週の金曜日、場所を移動してから初めて行われた音楽夜噺に行ってきました。
私も数名アラビア語学習仲間を連れて行きましたが、なんとなくニューフェイスな方々がたくさん聞きにいらしていたような気がしましたし、桜丘町でやっていた時よりも、さらにお客さんが増えていたように思いました。会場となったネイキッド・ロフトの店長さんがとても感じが良い方で、居心地の良い、アラビーな夜を過ごさせて頂きました。

というわけで、テーマは私が大好きなアラブ歌謡。「濃厚なるアラブのうたを求めて〜オラン/カイロの歌謡とポップス」
前半は中町信孝先生によるシャアビを始めとしたカイロ歌謡、後半が粕谷祐己先生によるライ、しかもフランスで生まれたワールド・ミュージック化したライというよりも、ライの故郷とも言えるアルジェリアの港町、オランを中心に展開された(る)ライのお噺、という構成でした。
お馴染みの「ポコチャカ歌謡(ダルブッカのリズムが効いたアラブ歌謡)」から始まり、聴いたこともないライのレア音源に至るまで、終始大興奮。後になってみれば内容がすっかり飛んでしまって頭に入っていないという情けない私なのです・・・。とほほ。

そんな情けない記憶力を最大限駆使して、レポをさせて頂きます。
だって、先週、「これから始まるアラビーな日々を少しずつ書いて行きます」なんて、予告しちゃいましたからね。まず第一弾として、音楽夜噺「カイロとオランの夜」です。

今回は話者の方がお二人とも学者の方で、シャアビとライの成り立ち、変遷、それに伴う多様化、現在の姿、両音楽の持つ社会性が透けてみえるような明快かつ的確なお噺となりました。それによって、アラブ音楽、特にアラブ歌謡を自分は聴いているようで実はあまりちゃんと聴いていなかったんだと悟らされることが多かったです。

植民地時代が終わり、アラブ主義の時代に入ったエジプト・カイロでは、濃厚で豪華絢爛なアラブ歌謡の世界が展開して行きます。歌手達はエジプト方言のアラビア語で歌い、文字通り、カイロはアラブ歌謡の中心地となっていき、湾岸地域やレバノンの音楽が勢いを持った現在でも、おそらくアラブ音楽の中心地であり続けているはず。
大御所、ウンム・クルスームの有名曲「Enta Omry」(やはり名曲!)に始まり、同曲のナワール・エル・ズグビーによるカヴァー。ウンム・クルスームは、やはりアラブ歌謡の黎明期という気がしますね。オーケストラをバックに歌われる1曲1時間を優に超えるという彼女の曲は、エジプト人たちが「オペラ」「オペレッタ」と呼んでいるというご説明もあったように、現在のアラブのポップス世界とはかけ離れいています。それに続き、アムル・ディヤーブやハキーム等、シャアビの代表格の歌手が取り上げられました。アムル・ディヤーブは、これまでも時代の流れをよく読むというか、時代によってころころと音楽性が変わってきた浮気性な(笑)歌い手だと思いますが、今回の選曲は2005年の最新盤。私はこのCDは聴いていませんでしたが、音楽が流れ出すや、司会の関口さんが、「まるでヨン様が出てきそうな・・・」と表現されていたのがおかしかった!ポコチャカ路線は見事に「卒業?」し、韓流メロドラマ系のサウンド。流行に敏感なアムルは、アジアの東の韓流ブームも既に視野に入れていた?!でも、最近のレバノンものを聴いていると、アラブ歌謡の世界では以前からのダンス音楽の潮流と共に、このメロドラマ路線もすでに確立されているのではないかと思います。
また、以前、中町先生のコラムを読んで気になりつつも未だチェックしていなかったシャアバーン・アブドゥラヒームの「俺はイスラエルが嫌いだ(Bakrah Israel)」。庶民派と言われる彼は、2000年以降、音楽を通してアメリカのアラブ政策を批判しているということですが(「NHKラジオ アラビア語講座テキスト 2005年8・9月号コラム。「遠近(をちこち)」No.5 山川出版社より)、彼のようにメッセージ性を持った歌謡が増えているのも最近の傾向だそうです。ちなみに、このシャアバーン・アブドゥラヒームさんを説明される際、「アドリブ系」「河内音頭系」なんて言葉も飛び出し、クスっと笑ってしまいました。見かけもなんとなく個性的なシャアバーンおじさんですが、コメディ系キャラ??
また、私の中で曖昧だった「シャアビ」という言葉と「シャバービ」という言葉。また、「アル・ジール」という言葉の関係性もなんとなく見えたような気がします。シャアビは、元来の意味がアラビア語で「庶民的な」を表す言葉であるよう、どちらかと言ったら土臭い演歌風。その中で、アムルが築いて行った都会派のポップスを、当初は「アル・ジール(直訳は「世代」←「当世風」という感じ)と呼んでいて、最近ではむしろそれらは「シャバーブ(若者の音楽)」と呼ぶようになったと。なるほど。(いずれもNHKテキストの中町先生のコラムを参照しています)

それに平行してというわけでもないですが、採用される歌詞の傾向も変わってきているようで、先ほど挙げたシャアバーンのような社会批判ソング以外にも、宗教的なものやラップ風のものも出てきているようです。参考までに、以前のアラブ歌謡の詩とはお馴染みの「ハビービー」をはじめ、恋人を瞳に喩えるものなどがポピュラーだったそうです。

その他、ラップ風の歌謡を聴く層がアッパーミドル層の若者だったりという話題も大変興味深いものでした。そうえいば、私が以前チュニジアの高級住宅街であるカルタゴ周辺を歩いていた時、子供達や若者の間でエミネムの顔の付いたシャツを着るのが流行っている様子だったことを、余談ですけど思い出しました。新しいお洒落な音楽として、経済的に余裕がある若者が聴いているということでしょうか。ラップの持つ機能とはかけ離れていますよね。また、「アラブのビヨンセ」(笑)Sherineが、その本格的な音作りに反して、カセットテープしか発売されていないというお噺は笑えました!
大人気のナンシー・アジュラムに関しては、カイロのホールで、有名曲「Ah we Noss」を歌っている映像を見せて頂きました。背中の開いたセクシー衣装を身に着けたナンシーちゃん。ナンシーの歌にリフレインでコーラスを着けるお兄さん(おじさん)たち。日本の昔のアイドル歌手のステージですね。それを数十倍熱狂的にした感じ?でも、中町先生もおっしゃっていたことですが、男性客だけでなく、家族連れやへジャーブを被った女性の姿も多く見られたのが印象的でした。やっぱりナンシーはすごい!

カイロ歌謡&ポップスがウンム・クルスームで始まったのに続き、ライも大御所シェイハ・リミッティの紹介で幕を開けました。
2004年に来日した際の貴重なインタビュー映像から始まり、かなりきわどいリミッティの詩の世界の説明へと続きます。そのきわどさと言ったら、思わず「ピー」を入れたくなるくらいのレベル(笑)。実は、今回ご紹介くださったライ歌手の中で「シェイハ(Cheikha)」を名乗っているのは、リミッティとシェイハ・ネジュマのみ。そのネジュマさんの方もリミッティに負けず劣らずのきわどい歌詞を歌っていて、あえてシェイハを名乗ることにより、リミッティの「いかがわしさ」を継ごうという意志を表明しているということでした。(先生のご説明と言葉使いが大分違う気が致しますが。)
以下、「ラマダンの夜」特集の時の先生のお話と少しかぶりますが(参照)、ライの成り立ちの説明として、そもそもベドウィン風の素朴な音楽だったライに、港町オランから様々な文化的要素が入ってきてそれらと合わさって行き、80年代初頭に、ダルブッカのリズムにシンセを入れた、「演歌風ラブソング」のポップライが浸透していったのだとか。
楽器陣にシンセをフィーチャーしたことについては、ミュージシャンをたくさん集める必要がなく、低予算で出来るからというお話があり、興味深かったです。そのシンセは日本製のものであったというお話を、確かされていたように記憶します。日本もライの発展に貢献していると思うと感慨深いですね〜。
また、独立後、内戦状態になり原理主義が台頭した90年代のアルジェリアで、たった5〜6年という期間ながらも、多くのカセットテープ作品を残し、原理主義の犠牲となったシェブ・ハスニのお噺は興味深かったです。彼が異常に多くのテープを残したのには、原理主義が力を持った時代に、コンサートなどのおおっぴらな活動がしにくかった代わりだということ。また、レア音源としてご紹介くださったシェブ・フワリ・ドーファンの10年前?の作品も、政情が最も不安定だった90年代にオランのナイトクラブで活躍していたということで、こちらはビデオも見せていただけるということでしたが、残念ながら機材の不調で今回はお預けに・・・。
機会あらばいつか見せて頂きたいものですが、興味深いのは、彼の名前。フワリ(Houari)という名の人は、彼以外にもオランではとても多い名前らしいのですが、それは「フワリ」が、オランの守護聖人の名前だから。マグレブでは守護聖人の名を取るって、ありがちですね。で、この名前の人だらけで区別が付けづらいから、もうひとつの名前があるということですが(フワリの場合はドーファン)、このもうひとつの名前は、ナイトクラブの名前から取られていることが多いとの事でした。
その他、ライの代名詞、ハレドとマミの作品。暗殺されたハスニの盟友、シャバ・ザウアニアの作品などなど(私はライの中ではザウアニアが一番好きなんです!)。それから、「ブタ箱入り」するほどの強烈な社会批判の歌を歌うシェブ・アズディン、アズディンほどではないけれど、社会派のライ歌手であるシェブ・ビラルなどなどの紹介が続きました。

お噺を聞いていて、絶えず頭には、いかがわしさと泥臭さが漂うまだ見ぬ街オランの光景が浮かび上がっては、あぶくの様に消えて行きました。
歴史上常に地中海に開かれて来たアフリカの港町には、いかがわしさ・毒々しさをも含め、常に新しい文化が現れてはミックスし、そして消えて行った。その背景が浮かび上がるような粕谷先生の選曲とお噺は、とてもドラマチックでした。
「いかがわしい港町(笑)」と言えば、モロッコのタンジャ(タンジェ・タンジール)も、そう。
港町には、商売人も、悪いやつも、そして享楽的な文化も自然と集まってくる。そして、儚く消えて行く。でも、そこにはまた新しいものが生まれ、常に魅力的な文化の混淆を生み出してくれる、それこそが、バックに広大な砂の大地を有しつつも、海に開かれた港町、オランなんだろうなと思いました。私は今回、失礼にも、マミの新譜もフォーデルの新譜も「オランの夜」も聴かずに参加する形になってしまい、予習不足だったのですよ〜。
取り合えず、ヨーロッパ大陸に渡って花開いたポップライだけでなく、土臭く濃厚なオランのライに触れてみたいな。『オランの夜』早く、購入しなきゃ。

音楽は芸術であるだけでなく、社会を語るもの、歴史を語るもの、そんな基本的なことを深く噛み締め反芻し、そして存分に楽しむことができた「アラビー」の夜でした。
お酒がなくても十分酔えるわ、これ。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(10件)

内 容 ニックネーム/日時
音楽夜噺っていいですね。一度行ってみたいんでが、九州なんかに住んでいたらとても無理な話で・・・。でも誰かの解説を聞きながら音楽を聞くというのは、凄く魅力的だと思います。

これまで音楽に関しては、話が通じる相手に恵まれること無く、ひたすら独力で色々開拓してきましたが、こういう催しがあるとまた違った聞き方ができるようになって、世界が広がるのではないかと思います。うーむ、羨ましい。
ころん
2007/02/28 12:50
いつもコメントありがとうございます。確かに東京にいると選択肢が多くて助かります。でも、九州にしかない個性的な行事もたくさんありますよね。中でもアジアマンスはお気に入りです。あと、福岡市に本部がある日本ケルト協会が、けっこうおもしろいイベントをやっていたように記憶します。音楽夜噺のような音楽トークイベントは、九州でも福岡くらいの規模の都市でやれば集客できそうですよね。ころんさんが中心になって始められては如何でしょう?(などと無責任なことを言う)
ころんさんの音楽に関する知識は独学だったのですか!すごいですね〜。ころんさんがお幾つくらいの方かは存じ上げませんが、相当長く濃い音楽遍歴でいらっしゃるんでしょうね。


elly→ころんさん
2007/03/01 21:56
>ラップ風の歌謡を聴く層がアッパーミドル層>の若者だったり

へえ、、マーケティングにかかわりますが
対象層が意外だったり、費用対効果が
計算外だったり、でもそういう違いが
ある意味新しい流行、モノを作り上げていく
ことありますよね。

ファンや感想が結構届きやすい(と思う)
音楽・バンドなどは、聞き手を見て
色々アレンジ変えたり、新しいものが生まれたりするのでしょうね。
*OZONののまねこも、、ある意味そうでしょう・・:)

タイトルが怪しい雰囲気の漢字ずらりで
気になってしまった「真面目でない(笑)」
私でした・・笑

*ジプシー音楽@クラブ、、、
結婚式の演奏には欠かせないのですが
私が今のところ知る中ではピンとくるものが
ありません、、行ったことないのかもしれません、、、思い出したら&今度またクラブ音楽などまとめますね!
go2rumania
URL
2007/03/02 19:33
そうですよね。おっしゃるとおり、意外なものが意外な層に売れたりって、やはりあるかと思います。文化とところ変われば、好みも変わり・・・。日本人にはなんてことないようなものが、外国人には受けたりするから、やはりリサーチは必要だわ、と思います。OZONののまねこ、流行りましたね〜。音楽自体は何年かに一度世界的に火がつく曲調ってあるじゃないですか?「マイアヒ」は、まさにその王道を行く曲調だったと思いますが、それに、のまねこを組み合わせた点は素晴らしいですね。
で、タイトルが怪しい雰囲気の漢字って、『百人町音楽夜噺』ですか、ひょっとして?
あ、ルーマニアのクラブ事情、偶然行き会えばで結構ですので。ブカレストのナイトライフの続きもそのうちまたお伝えくださいね。
elly→go2rumaniaさん
2007/03/05 19:15
なんだってー!韓国−エジプトに音楽裏ルートがー!?
というわけで遅ればせながらコメントさせていただきます^^いやー濃厚な内容だったようですね。曲もかなりたくさんかけているのですね。シャアビとシャバーブ、私も「え、違うの?」という感じでしたがやっぱり違うのですね!(当たり前か?)。
やはり"政治的な"お国柄というか、そのあたりの事情もからめてかなりふむふむでした。ellyさんの力のこもった記事を読んでいると私までアフリカの港町をふらついてきたような、そんな気分になりました。
えひ山
2007/03/07 20:20
アーシファ・ジッタン!とず〜っと念を送っておりました。連れて行ってくださいとお願いしていたのに、逃亡…
ご連絡もせずに失礼しました。
しかし、行きたかったです!ホント、記事だけでも酔ってしまいました。
aoi
2007/03/08 23:11
そうなんです・・・韓国エジプト間には裏ルートが?!
でも、確か「冬のソナタ」はエジプトでも放映されたから、音楽への影響はありえなくはないですよね〜。
この日の夜噺は、いつもに増して音楽の社会的な面・歴史的な側面を考えながら聴くことができたように思います。
曲に関しては、ここで挙げたのは一部なので、後ほど夜噺サイトで上がった際に、ぜひ再度チェックされてくださいね〜。
elly→えひ山さん
2007/03/09 23:16
aoiさん、お帰りなさい!そして、早速お越しくださりありがとうございます。aoiさんがエジプトへお散歩に行かれたため夜噺アラブ編へお連れ出来なかった旨、まことに勝手ながら中町先生へ伝えさせて頂きました。aoiさんは現地で濃い〜音楽に触れてこられたことでしょう。近いうち旅のお噺、聞かせてくださいね。
elly→aoiさん
2007/03/09 23:20
ええ〜!!
おそれおおい…
中町先生に…
なんて驚くことを。ぜひお話しましょうね。
お目にかかれる日を楽しみにしています。
aoi
2007/03/10 23:53
え?!サプライズだったかしら?
わ〜い!エジ話聞かせていただくの、楽しみです♪この春は、aoiさん以外にも中東・北アフリカへ行った友人がたくさんいて、お土産話を聞かせていただく機会が多いんですよ〜。うー、私も行きたいっす!
elly→aoiさん
2007/03/11 02:45

コメントする help

ニックネーム
URL(任意)
本 文

Welcom Map

welcommap
Welcom Map
カイロとオランの夜に酔った!(百人町音楽夜噺) ETHNOMANIA/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる