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zoom RSS アランブラの夢〜suena LA ALHAMBRA〜

<<   作成日時 : 2007/01/23 18:14   >>

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画像[sueña LA ALHAMBRA(アルハンブラを夢見て)]
Enrique Morente(2005年)

1.Martinete
2.Generalife
3.Seguirilla de los tiempos
4.Cristalina fuente 5.Chiquilín de Bachín
6.Soleá de la ciencia
7.La Alhambra lloraba
8.Donde habite el olvido
9.Taranto veneno
10.La última carta


地球上で私が最も心惹かれる地のひとつに、スペイン・アンダルシア地方があります。彼の地では、アラブとスペインの文化の混淆の跡が現在でも彩り豊かに見られるから、フラメンコの音色に激しく心揺さぶられるのが快感だから・・・などなど、もっともらしい理由ならいくつも挙げることができますが、自分の心の声をそのまま伝えるとすれば、単純に、あの空気感が肌に合っているから、それと、地球上で一番美しい夕陽(私はそう思っています!)が赤い大地に沈んでいくのを眺めるのが好きだから、だと思っています。

ちょっと前に、aoiさんのブログ、『イスラミック・ブルー』で、アンダルシア紀行を読みました。aoiさんは、アラブ文化の跡を求めてアンダルシア地方をディープに旅されていて、普通の旅行者が行くであろうグラナダ・コルドバ・セビーリャといった土地以外にも、ガイドブックに載っていない「カリフの街道」沿いにあった街なども巡られ、その深い感性と芸術性・文章力からなる珠玉の紀行文を惜しげもなく発表してくださっています。一年ちょっと前、aoiさんの文章を初めて読ませて頂いた時、そのなんとも言えない夢幻の世界、浮遊感、そして読んでいる人にまで激しい郷愁の念を喚起させる、静かなようでいて実は情熱的な文章にすっかり魅了され、また、私がイメージしていたアンダルシアを表現するのに、aoiさん以上にぴったりな人はいないとまで思わせられたのです。(・・・って、なんだかaoiさんへのファン・レター、はたまたラブ・レターのような文章になって来ましたが)

今回も『イスラミック・ブルーの旅』から帰ってきた後の数十分間、我知らず深い空想の世界へ誘われていました。その後にふっと聴きたくなった作品がこの『sueña LA ALHAMBRA(アルハンブラを夢見て)』。
「自分は古典的な歌手だ」と自ら言い切るほどクラシカルなカンテの世界に精通し、「カンテ・ホンド(心の底から湧き出るような深い歌)」を、そのノスタルジックなしゃがれ声で歌いあげるグラナダ出身のカンタオール(歌い手)Enrique Morenteが、アランブラ(アルハンブラ)宮殿を「主人公」にして作成されたドキュメンタリー映画のテーマソングとして発表したのが、このアルバム。
カンテ・フラメンコのクラシカルな部分を大切にしながらも、実に革新的で独自的な音楽性を持ったアルバムだと思います。

多くの曲をモレンテ自身が作り、トラディショナルな曲に関しては自らアレンジし、ディレクター・プロデューサーも務める。まさにモレンテの世界観がダイレクトに示され、故郷グラナダ、そしてアランブラへの想いを美しく体現した彼のアランブラ・オマージュとも言える作品だと思います。が、同時にジャズのパット・メセニーが2曲にプレイヤーとして参加していたり(一曲は作曲にもクレジットされています)、アストル・ピアソラ作曲・オラシオ・フェレール作詞の「Chiquilín de Bachín」 も採用していたりと、トラディショナル・クラシカルに偏ることのない革新的な部分も有しています。詞に関しては、スペインの伝統詩人(María Zambrano、San Juan de la Cruz、そしてCervantesなど)の作品を、多くの曲にあてています。
そして、なんと言っても1曲目から10曲目まで流れるように展開される物語性のある曲目は、聴いていて全く飽きさせることがありません。画像
例えば、パット・メセニーが参加した2曲目の「Generalife」は、水滴の落ちる音や鳥の囀りのSEに始まり、緩やかでジャジーなギター・ソロに至るまで、霞にけぶる朝まだき、早春のヘネラリーフェ離宮の光景を、曲タイトルを見る前から完璧に私に連想させましたもの。ドラマチックなヴァイオリンの咽び泣きから始まる幻想的な「Cristalina fuente」は、モレンテとエストレーリャ(モレンテの娘であり、歌い手)の柔らかく神聖なカンテが印象的だし、多重録音された弦楽器が幻想性を増しているし、やはり「Cristalina fuente( 水晶のような噴水)」を容易に連想させられました。ある年、夏の終わりの夜に訪れたアルハンブラ宮殿の水盤は、水晶のようにキラキラと輝き、幻想的だったなあ・・・。などなど、想像力を嫌が応でも掻き立ててくれるのだ。
それほどの強烈な個性が一曲一曲に宿っていると思います。加えて言うと、アルバムのコンセプトとして、「アルハンブラの四季」というのがあったそうです。なるほど。

参加メンバーには、パット・メセニーの他に、ギターのTomatitoや、Isidro Muños(「Donde habite el olvido」では作曲も担当)、コーラス・カンタオーラに、先ほども書いたモレンテの娘、Estrella Morenteを参加させていたりと、フラメンコファンには参加メンバーの点でも大いに楽しめます。不思議なことにトマティートのギターって、いつもクレジットを見る前からすぐに彼のギターだ!って、分かるんですよね〜。
そして、エストレーリャ・モレンテの歌は初めて聴いたのですが、アルトの音程ながら透明感のある伸びの良い声で、コーラス以外に彼女のカンテがフィーチャーされた曲も含め、とても聞きやすい、好き嫌いのない声だと思いました。フラメンコの「絶叫」が苦手な方には、彼女のカンテは良いかもしれません(あ、でもこのCDがたまたまそうなのかもしれませんが)。

カンテに関して言えば、フラメンコ・ギターの音がどこまでも冴えて聴こえるのに対比させるかのように、適度にエフェクトがかかっているところも、その「幻想性」に貢献しているのかも知れません。

余談ですが、ジャケットに採用されている、アランブラ宮殿に残るアラベスクをあしらったデザインも、とても素敵だと思います。

1曲目から10曲目まで通しで聴き、アランブラを巡る四季をまるでその場で体感したかのような気分になり、ふっと現実との境を見失いそうになるその瞬間のなんと心地よいことか!
そして、モレンテは、現在のアランブラだけでなく、アランブラを舞台に展開された歴史の旅へとも誘ってくれていたことに、聞き終わった後ふと気付くのです。
アランブラの夢の跡・・・
それを辿りに再びスペインの地を踏まずとも、今の私にはaoiさんの文章と、このモレンテのCDで十分かなあ・・・。
(aoiさん、許可無く登場して頂きました。ごめんなさいね。)




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コメント(8件)

内 容 ニックネーム/日時
アルハンブラこないだ行ってきたよー!
でも夕日は、曇っていてあんまよくわからんかった。。見たんですか。いいなあ。
せぼぬ
2007/01/24 07:45
おお、なんだかスペインへすぐにでも行きたくなるような文章ですね。前から思っているのですが、ellyさんの文章って「その気にさせる」文章ですよね。素晴らしい筆力だと思います。

東南アジアの泥沼にハマっている私は、フラメンコについては殆ど知らないのですが、いずれはそちら方面も聞いてみたいと思ってます。今のところラ・ニーニャ何たらという長い名前の歌手の音の悪いCDしか持っていませんが、今夜あたり聞いてみようかな。それともスアド・マシのフラメンコっぽい曲でも聞くか…。
ころん
2007/01/24 11:33
いよいよ復活ですね。お待ちしておりました。
『アルハンブラを夢見て』、スペイン語の学習もサボりっ放しの僕が言うのもナンですが、いいタイトルですね。行ったこともないのに夢見てしまいそうです。僕はマドリードのタブラオでフラメンコを観たことがありますが、終始ハイテンションな魂のカンテとバイレにうっかり落涙してしまう有り様でした。おそらく前世においてもヒターノと繋がりがあるとは思えないのですが、このときは琴線にべったり触れてしまったようです。
ちなみにとなりのテーブルにもよその日本人カップルが座っていましたが、つまらなそうに帰っていったのが対照的でした。きっとアンダルシアにも行くべきでした。
…それにしても、パット・メセニーも働き者ですよね。
questao
2007/01/24 20:50
いつもお褒めいただき、穴があったら入りたいようです。
ellyさんの言葉に酔って、またつれづれに書いていきたいと思います。
スペインの音楽がからっきしなので、教えてくださいね。
アンダルシアに還りたい熱が、また上がってしまいました!
aoi
2007/01/24 21:06
せぼぬさんの旅日記もちゃんと読みたいと思いつつ、時間に追われている状況です。
そうですねー、あの地域はやはり冬に訪れると天気があまり良くないのが欠点ですよね。
私が訪れたのは晩夏ですが、燃えるような赤でしたよ。
elly→せぼぬさん
2007/01/26 16:45
嬉しいお言葉をありがとうございます!「その気にさせる」文章って、素晴らしい褒め言葉ですね。ラブレターの代筆稼業でも始めようかしら・・・と、調子に乗ってしまいそうです。
ころんさんがお持ちのCDは、きっとLa Ni&ntilde;a de los Peines ですよね?「文化財」とまで言われる声の持ち主、ちゃんと聴いてみなければと思いつつ、実は私はCDが手元になかったりします。意外に古いものを聴いてなかったりするんで、フラメンコに詳しいとはお世辞でも言えない私です。スアド・マシの「デブ」は、私も大好きなアルバムです!
それから、東南アジアは一度はまるとなかなか抜け出せなさそうですよね。私は一生ころんさんやNAKAさんのようにひとつのジャンルを突き詰めて聴く(その前提には、いろんなジャンルを満遍なく聴いてこられたバックグラウンドもありつつ)ことは、できそうにないです。大尊敬です。
elly→ころんさん
2007/01/26 16:53
待ってて頂けたなんて、嬉しいです。
しかぁ〜し!アラビア語のテストが近いので、また10日間ほど更新できないと思うのです。いろいろ何か書いておきたいCDも溜まってるんですけどね。
questaoさんの、マドリッドのタブラオでのお話。同じものを聴いて涙を流す人もいれば、つまらなさそうに帰っていく人もいる・・・。人の感性はいろいろですね。いや、questaoさんの前世はアンダルシアのヒターノと繋がりがあるかも知れませんよ。(だとしたら、私とは前世でご近所のはず?!)
パット・メセニー、私は殆ど聴いていなかったので、彼のディスコグラフィを覗いてみました。うん、確かに。ジャズ以外にも、クラシックや、ロックと幅広くコラボしてるんですね〜。その中で、ジャズのブラッド・メルドーとのコラボ盤をぜひ聴いてみたいと思ったのですが、何か他におススメ等あれば、教えてくださいね。
elly→questaoさん
2007/01/26 17:02
アンダルシア紀行、続きも楽しみにしております。夢幻の世界へまた誘ってくださいね。
スペインの音楽は、多分私よりも地中海「隊長」の方がお詳しいと思っていますが・・・如何でしょう。
aoiさんが近い将来アンダルシアへ還れますように・・・。
elly→aoiさん
2007/01/26 17:06

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