ETHNOMANIA

アクセスカウンタ

zoom RSS ラマダンの夜〜第三夜〜

<<   作成日時 : 2006/10/08 18:54   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 4

こんなに美しいものが自然界以外にも存在するのか・・・いささかおかしな感想ですが、シアター・コクーン最終日のメルジャン・デデのステージを観て感じたことは、まさにこれでした。
そして、私が一生のうちに出会うライブの中でも、私にとってこの日のライブは今後もきっと数本の指に入る最高のものになるのでは、という予感がしています。
この強い印象は、グナワ@クアトロの、とっても楽しいライブの後でさえ色褪せることがないのですよ。

開演前、少しざわつく会場に、思えば随分前から寄せては返す波音のSEが聴こえていた。
照明が落ち始め、少しずつその波音が大きくなり、カーヌーンの澄んだ響きとクラリネットの低い唸りが絡み付いてくる。なんとも切ない旋律。
それでもまだ幕は上がらない。下りきったままの幕の表面には、どんよりと曇った空の下、海面を疾走する船の姿が、そしてボスポラス海峡から臨んだイスタンブールの全景が映し出される。
そして静かに幕は上がる。
波音はそのままフェイド・アウトし、最新作「Nefes」の一曲目のイントロへと流れていく。
そう、私の中で、メルジャン・デデの紡ぎだす音は、晴れ渡った「青」のイスタンブールではなかった。まさに、この日映像で見せてくれたような、どんよりと曇った雨模様のボスポラス。
アルバムで聴いた時から、この曲の持つ、なんとも言えない哀調と切なさが好きだった。
その切ない調べを、カーヌーンとクラリネットの旋律が見事に再現してくれる。
メルジャン・デデの深い深い声が、一種胸の痛みを伴った陶酔境へと誘ってくれる。

ステージ両端には、この日メヴラーナの舞を見せてくれるふたりの女性の踊り手が腰を落とし控えている。伝統的な旋回舞踊の者が被る丈の高い赤い帽子ではなく、まるで聖者か修行僧であるかのようなターバンをぐるぐる巻きにして、微動だにせずに構えている。

ステージ中央にはとても控えめなDJブース。
この日メルジャン・デデを支えるシークレット・トライブのメンバーは、クラリネット奏者、パーカッションの見本市かと思われるような様々な打楽器に囲まれたパーカッショニスト(以上のふたりは親類関係)とカーヌーン奏者。いずれもとても若いジプシーの演奏家だということ。
ステージ上のそれぞれの立ち位置(座り位置)の配置があまりにも見事で、全てが計算ずくの舞台芸術のように思えてくる。それはまるで無意識的に行っているかのように見せながら、全てが「在るように」配置された日本の禅寺の庭のよう(また変な喩え!)。

ステージ向かって右側に控えていた踊り手がすっと立ち上がり、緩やかに舞へと入っていく。曲はAB-I HAYAT(多分)。
まるで踊り手自体が自分自身を少しずつ昂揚させていくためであるかのように、ゆっくりゆっくり上り詰めていくダンスは、穏やかであると同時に、ピーンと張り詰めた緊張感さえ伴っていた。
左手を天に、右手を地に向けて旋回する通常の舞とは違って、スタイルはかなり自由。腕の動き、指先の動きのひとつひとつが喩えようもなく美しい。
旋回するときに足先が床と擦れてかすかに耳に届く衣擦れの音さえ完璧に美しいのだ。
オープニングから絶えず流れ続ける映像は、青い花が開き閉じる様子をコマ送りしたトランシーな映像。五感全てを動員してトランスへと向かう手助けをしてくれる。

そして、デデもおもむろにネイを手に取る。
全霊を込めて搾り出すかのような魂のこもった擦れた音に、涙が出そうになる。
そのネイの音は、デデの深い深い声に、完璧に対応している。
まさに、ジェラールッディン・ルーミー(メヴラーナ)が詠った「風に咽び泣く葦」を連想させるその音は、神との別離を嘆き悲しんでいるかのよう。ルーミーのペルシア語の詩の一節が頭を掠めていく。
それにしてもネイとクラリネットの相性ってすばらしくいいんだな。
最新アルバムのコンセプト「息」を、そのままステージにも再現している。
知らず知らず聴いている側も、呼吸が深くゆっくりと落ちていくような感覚を味わう。

私はこの瞑想的で静かなステージのまま通しても良かったなーなんて思ったりもしたのですが、途中、ステージはダンス・チューンに突入!
ジプシーミュージシャンの奏でる高速クラリネットとダルブッカの響きが、会場を一気にヒートアップさせる。
この落差がなんとも気持ちいい!
客席通路に乗り出したベリーダンサー達の中に、ひとり、なんともトライバルな踊りを披露するお姉さんがいて、密かに私は「トライバル姐御」と呼んでいるのだ。
ダンス・チューンは一曲で終了。大人しく席へ帰っていくダンサー達の姿がなんともかわいらしい。

でも、アンコールでもまたやっちゃったんだよね!トライバル・ベリーダンス!

ラストは踊り手ふたりによる旋回舞踊。
ひとりはミラーをたくさんちりばめた衣装、ひとりは驚きの電飾つきの衣装!と、観るものをあっと言わせる演出。いや、これUPLINKの予習でも、めちゃくちゃ楽しみな部分だったんです!
踊り手がくるくるくるくる旋回するのに合わせ、光のウエーブが舞台を流れ、目を掠めていく。
夢の世界そのもの。
そして、頂点に達した瞬間、ストーンと音楽は落ち、そこにはプログラミングされたベース音だけが鳴り響いていた。それは、人間の鼓動に呼応したゆっくりゆっくりとしたリズム。
カッワーリーの8拍子にシンクロした、いささか速い鼓動で始まった私のラマダンの夜は、こうしてメヴラーナの緩やかで穏やかな鼓動に身を任せることによって、深い呼吸で幕を閉じていきました。

全てが終わったあと、ほっとしたようにステージ中央で互いを抱きしめ合った踊り手、そしてふたりを称えるかのように、そっとガウンを着せてあげたデデの優しい表情が印象的でした。

「ラマダンの夜」を通して、イスラーム文化の多様性と寛容の精神を改めてつよく感じさせられました。
その一方、演奏者の地域もジャンルも、共に多岐に渡っていたにも関わらず、その根底に流れるものは驚くほどシンクロしていたように感じます。
今回の公演を通して、音楽によってしか達成できなかった文化間の交流も、きっとたくさん叶ったはずだ!と、私は確信しています。











テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
うー、大力作記事ですね。
ところどころの深いツッコミが素晴らしいです。
配置が禅寺のよう、とはほーなるほど!と膝を叩く思いです。そう言われるとメルジャン・デデは日本のお寺や古い文化が好きそうですものね。^^

あと、ダンスタイム終了後そそくさと席に戻る人々の”かわいらしさ”は私もちょっと笑ってしまいました!
えひ山
2006/10/08 23:17
音楽の演出、舞台、そして音の流れ、、
また異国(この場合日本、その国では
ないところ)で聴くと別の風味がプラスされ
楽しめますよね。その国でしか聴けない音も
あれば、他の国だからこそ映える音もある、、
だから音楽は世界共通なのだな、とも
思います ・・・ :)

講演会もですが、こうした音楽はもっと
興味があるかもしれません!実は昔、、
音大に行こうか、と考えていた時も
あったので。今はもう弾いていませんが・・・

10月下旬から帰国します。何かありましたら
カギコメかメールで教えて頂ければ
ありがたいです :)
go2rumania
URL
2006/10/09 00:02
全ての記事にコメントを頂いてしまいました。恐縮です。
この日は偶然にもえひ山さんとお隣の席だったんですよねー。
メルジャン・デデが奏でる「共感覚」を誘う音楽の影響もあり、ますますすばらしい時間をえひ山さんと共有できたという思いが強まりました。
そういえば、メルジャン・デデの達観したような穏やかな物腰は禅寺の僧侶にも通じるものがありましたよね?
細かい部分の感想は人それぞれでおもしろいです。えひ山さんのレポートに、私の方こそたびたび唸らされましたもの。
elly→えひ山さん
2006/10/09 00:49
すみません。ここのところ、こういった事情(どういった事情?)で忙しく、ちょっとご無沙汰しておりました。コメントを残してくださり、ありがとうございます。
そうですね、同じ音楽でも聴く環境などによって随分雰囲気変わったりしますよね、きっと。
特に空気感とか重要な要素かと思います。
日本の場合、やっぱり湿った音になるのでしょうか。そういった意味では、今回来日したミュージシャンたちの奏でる音は、このメルジャン・デデを筆頭に日本の空気と合っていたものも多かったのかもしれません。
go2rumaniaさんは、なんと音大を目指していらしたのですか!楽器?ですよね?本当にいろいろと才能豊かな方なのですねー。
このイベントにご帰国が間に合わず残念です。
絶対お好きだったと思います。10月末ですか。何か調べてみますね。
elly→go2rumaniaさん
2006/10/09 00:50

コメントする help

ニックネーム
URL(任意)
本 文

Welcom Map

welcommap
Welcom Map
ラマダンの夜〜第三夜〜 ETHNOMANIA/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる