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zoom RSS イスラム音楽を語る夜 第2弾(エキゾ夢紀行番外編)

<<   作成日時 : 2006/09/18 00:50   >>

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私のブログ上ではコンダ・ロータ・ネタ第3弾。
第1弾第2弾は過去記事を参照してね。)
土曜日の夜UPLINKにて、サラーム海上さんと金沢大学教授、粕屋先生のお話を聞いてきました。
今回はグナワ・ディフュージョンとメルジャン・デデの話題。
普段はライの専門家として、そしてフランス文学者としてご活躍される粕屋先生ですが、だからこそいつもと違った視点から語られるグナワ・ディフュージョンの話題は、聴きどころが多かったですし、またグナワ・ディフュージョンに限らず周辺の音楽も含めた珍しい映像をたくさん見せていただき、頭の中がパンパンな状態での帰宅となりました。

グナワ・ディフュージョンに関しては、まず中心的メンバーのアマジーグ・カテブの思想の背景が語られました。
アマジーグは、アルジェリアのカビール族(アルジェリア北部の山岳地帯カビールに住むベルベルの一部族)出身で、アルジェリアを代表する作家、カテブ・ヤシーヌの息子として1972年に生まれました。その後、祖国を追われ先にフランスはグルノーブルに渡っていた父を頼って自らも渡仏します。父親がアルジェリアの独立に際し、ベルベル語をはじめベルベル文化を擁護する立場に立ち、またイスラーム原理主義が台頭した独立後の祖国において女性解放を謳った社会派の作家だっただけに、その影響を大きく受け育ってきたようです。
そして、その影響はデビューのきっかけにも大きく現れているようです。フランス共産党のイベントに招かれた際に、ルイ・アラゴン(自らも共産党員で共産主義的作品を残した作家)の詩に曲をつけて出場したのが、グナワ・ディフュージョンとしての最初の活動だということでした。
この前の記事にも少し書いたことですが、デビュー後も、ブール世代(アルジェリアからフランスに渡ってきた移民。「アラブ」をそのまま逆さまに呼んだ呼称。もともとはフランス人がアラブ移民を指す差別用語。)を代表するかのように、祖国の社会問題、フランス国内で差別的な立場におかれた移民たちの窮状や、国内に留まらず最近は広く中東問題も扱った社会性の強い過激な歌詞で、「イスラーム・アラブの側」から、また祖国に対しては「カビールの立場」からの自己発信も続けているのがグナワ・デフュージョンです。

アラブ世界の音楽と言えば、ダルブッカの軽快なリズムに乗り、愛を歌ったノリのいい曲が頭に浮かぶことが多いのですが、これまた独立後のアルジェリアで活躍し、原理主義者に暗殺されたライ歌手、シェブ・ハスニ、アマジーグ・カテブと同じカビールの出身で、やはり原理主義者に暗殺されたと言われるマトゥブ・ルネスがいたりと、暗殺の対象となってしまうほどに社会性の強い音楽活動をやっている人たちもいるわけです。私の印象ではそういった人たちは圧倒的にアルジェリア出身の音楽家たちが多いと思います。そして、祖国で活動することに危険が伴うため、別の国へ移住を余儀なくされた音楽家たちも多数いるようです(私が以前レビューを書いたスアード・マーシーもそのひとりです。もし良かったらそちらの記事も読んでくださいね)。
そして、そういった「闘争の歌」は、やはりフランスで活躍する歌手に圧倒的に多いのではないでしょうか。それには、フランスにおけるイスラームやアラブのコミュニティーの在り方も影響しているでしょうし、フランス革命以来、フランス社会の特質である「平等」の精神が、現代の移民を多く抱える社会には合わなくなったことも関係あるのかもしれません。学校における女子のスカーフ着用問題や労働者階級の暴動はまだ耳に新しいニュースですよね。

そして、興味深いのは、グナワ・ディフュージョンがつくる音楽の殆どがフランス語で作詞されていること。中にはアラビア語のものもあるようですが(アマジーグはカビールの言語はできないそうです)、大部分はフランス語とのこと。そこには勿論、フランス語を母国語とする移民2世、アラビア語が殆ど出来ない移民3世たちにも理解可能な言語で、という意図もあるのでしょうが、やはり最初からコミュニティー内部に留まる音楽としてではなく、国全体に、そして世界にアピールできる音楽を目指していたということなのではないでしょうか。

彼らの音楽の社会派な部分として楽曲から具体的な例を挙げますと、例えば、サラーム海上さんがフランスにいらした時にとても流行っていたとおっしゃる「Ombre-elle」という彼らの代表曲の中には、マゾヒスティックともとれる過激な歌詞が出てくるのだそうです。その内容は「彼女の椅子になって敷かれたい」というようなもの。実際、マゾの歌!として捉えられる向きもあったらしいのですが、彼らの背景を良く知ってみれば、それはイスラーム原理主義が勢力を持ち女性差別の甚だしい祖国を見て、父同様、男性が女性の下に敷かれている「絵」を提供することにより、女性の権利を説いたということのようなのです。
一番新しいアルバム「スーク・システム」では、911後の世界を明らかに批判したと取れる歌詞も随所に見られるようですし、「文明の衝突」に対する憤りの気持ちの表れや、イスラームの側からの自己主張といったことも念頭において彼らのステージを見れば、ますます奥深く彼らの音楽を楽しめること間違いないでしょう。

それから、グナワ・ディフュージョンの音楽性として、グループ名からはグナワのみを想像する人もいるだろうけれど、他にもラガ・ロック・シャービといった要素も見られるということでした。

関連して、シャービとライの違いを説明されたのですが、それがとても興味深かったので、少し書いておきます。
今あるシャービのスタイルは、1920〜30年代にかけてモハメッド・エル・アンカという人が確立したものだそうで、いわゆるアルジェのカスバ起源の音楽なのだそうです。ミュージック・クリップの一部となっているその方の映像も見せていただきましたが、ウードを弾きながら歌うスタイルで、隣には確かダルブッカを叩いている人が移っていました(もう記憶が曖昧)。曲調としてはド演歌調歌謡ですね。

両者の違いを表す言葉として語り手のおふたりがそれぞれおもしろいことをおっしゃっていたので、ちょっと拝借してここに書かせていただきます。粕谷先生いわく、「ライとシャービの違いは大阪と東京の違い」。そして、サラームさんがおっしゃるには「シャービは、伝統的なアラブ=アンダルース音楽で使われる楽器に割りと忠実な楽器編成で、都会的な感じがする。対して、ライはもっと愛欲の世界を描いたどろどろしたものだ」とのこと。ライの楽器編成に関しては「初期の頃のライは、太鼓、ギター、アコーディオンといったものから始まった」と粕谷先生。なるほど。

また、カビールの音楽がどういったものかということも気になるところですが、それは非常に説明がしにくいということでした。
映像としては、カビールのモダン歌謡を築いたというIDIR AZWAWという人のライブを見せていただいたのですが、うーん、何に似ているのだろう。粕谷先生いわく「カビールの吉田拓郎」ということでしたが。
確かにカビールの音楽はフォークギター一本を手に抱えて演奏、歌うスタイルの「フォーク・ミュージック」に分類される音楽が多いのかもしれませんね。(私が今まで聴いたものも[いや、そんなには聴いてませんが]確かにアコースティックで静かななものが多かったかなあ。)闘争の歌、何かを主張する音楽には、これ以上にぴったりのスタイルはないのかも、ですね。

総括。
グナワという音楽に関しては、私は自分の好みではないとずっと思っていたため(ループする音楽って基本的にあまり好きなものがないのです)、今までグナワ・ディフュージョンもちゃんと聴くことがなかったのですが、思想的背景、また音楽性の多様さを知るにつけ、今回最も楽しみな公演となりつつあります。


後半のメルジャン・デデは、サラームさんのメルジャン・デデとの出会い、またサラームさんが直にインタビューされた時に聴いた、デデとネイの出会いについて(その話は以前、デデのCDのライナーにも簡単に書かれていたと思いますので、興味がある方はそちらをご覧になられてください。)が、やはり興味深かった話のひとつです。
そのお話は、現実とは思えないくらい浮世離れしていて、そしてスーフィーの世界を色濃く現すかのような伝説的なエピソードなのです。

その後、過去のライブ映像を2本だったかな?見せて頂いたのですが、ダンサーの女性(この人もともとメヴラーナ教団の方ではなく、西洋人のモダンダンスの女性なのだそう)が廻るのに合わせ、光の輪を描く衣装がとても幻想的で印象に残りました(この画像、サラームさんのブログにて見れます→コチラ)。コンダ・ロータではダンサーは2人来日するそうで、音楽もさることながら、舞いも楽しみですよね♪

他にも楽器博物館?でのメヴラーナの舞いの映像や映画「Crossing the Bridge」から冒頭の映像を少しと、ハルク(トルコ民謡)の大物女性歌手、サバハット・アクキラズのレコーディング風景(「Crossing〜」のオマケ映像?)も見せていただき、益々デデの公演が楽しみになりましたよ。(「Crossing the Bridge」も来春映画が公開になります。)

☆フェスティバル コンダ・ロータと関連イベントの詳細についてはコチラを。

追記(9/24):アマジーグ・カテブの講演会が10月5日に行われます。
        以下、粕屋先生のブログより引用させていただく形で、
        詳細をお知らせいたします。
      
  〜アルジェリアとフランスと音楽と〜
     アマジーグ・カテブ講演会

  日時:10月5日(木)19時より21時
  場所:早稲田大学16号館309号室
  講師:アマジーグ・カテブ(音楽グループ
        「グナワ・ディフュージョン」リーダー)
  主催:現代フランス研究会
  協力:(株)カンバセーション
  
  入場無料。通訳付き。


*詳しくは粕谷先生のブログをご覧になられてください。

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コメント(6件)

内 容 ニックネーム/日時
ブールって,そういう意味なんですね。感謝。
NAKA-036
2006/09/20 12:23
そういう意味らしいです。
NAKAさんお仕事如何ですか?
お忙しい中コメント感謝!
elly→NAKA-036さん
2006/09/21 19:53
粕谷です。先日はわざわざお越しいただいてありがとうございます。
アマジーグ・カテブ講演会(10月5日)の案内、TBさせていただきます。よろしくおねがいします。
raidaisuki
URL
2006/09/23 17:04
こんばんは。ellyさん、ご旅行後もかなり精力的にお出掛けされていて頭が下がります…。ライとシャアビの違いは大阪と東京の違い、ブールということば、デデやグナワ・ディフュージョンの情報…といろいろ情報も仕入れさせてもらい、ありがとうございます。
すっかり出無精(≒デブ症)になりました昨今ですが、『Crossing the Bridge』はぜひ観に行きたいです。
questao
2006/09/23 21:13
先日は先生ならではのグナワ・ディフュージョンのご紹介、とても勉強になりました。より広い視野を持って公演に臨めそうです。
アマジーク・カテブの講演、滅多にこのような機会はないですよね。たくさんの人が話を聴くことにより、中東・イスラーム諸国が抱える問題、またヨーロッパにおける移民問題等、考える時間をもてるといいなと私も強く思います。
TBですが、既にお試しいただいたのにひょっとしたらできなかったのではと心配しております。最近スパムTBが多く、制限をかけていたためできなかった可能性があります。現在制限を解除いたしました。もしよろしければまたの機会に再度TBしていただけますでしょうか。よろしくお願いいたします。
elly→raidaisukiさま
2006/09/24 14:38
いやいや、私もそんなに精力的に活動はしておりません。確かに、ここのとこコンダ・ロータに向けて自分の中で無意識に盛り上がろうとしているやも知れませんが…。
questaoさんが以前おっしゃってたように、粕屋先生は要点がはっきりしていて、分かりやすい言葉で噛み砕いてお話くださるので、頭に入り易く、またおもしろく拝聴できました。シャービとライの違いの説明などその最たる例ですね!
「父ちゃん」お忙しいかと思いますが、またひづめさんとご一緒に映画等、堪能する時間が持てるといいですね!
elly→questaoさん
2006/09/24 14:43

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