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zoom RSS 燻し銀のような「悪(ワル)」の芳香〜DARKO RUNDEK & CARGO ORKESTAR

<<   作成日時 : 2006/08/18 23:41   >>

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[Mhm A-ha Oh Yeah Da-Da~Migration Stories and Love Songs](2006年)
DARKO RUNDEK & CARGO ORKESTAR

1.U-Bahn U-Bahn
2.Slick Señorita セクシー・セニョリータ
3.12 Ptica[12 Birds] 12羽の鳥
4.Sensimilija(Jeff the Greatful) センシミリジャ-偉大なるジェフ
5.Zvuk Oluje[The Sound of the Storm] 嵐の叫び
6.Kolo[Round] 環
7.Highlander ハイランダー
8.Wanadoo ワナドゥー
9.Ne Okreci se[Don't turn around] 振り向くな
10.Helga ヘルガ
11.Put u Sumrak[The Dusky road] 埃っぽい道
12.Mhm A-ha Oh Yeah Da-Da ムー・アー・ハー・オー・ヤー・ダーダー
13.Svitanje[Dawn] 夜明け


今日は久々のCDレビューを。(おっ!今週は5日も更新してるよ!)
クロアチア出身のDARKO RUNDEK&CARGO ORKESTARの新譜について書きますね。
でもでも、クロアチアに行ってきたばっかの私が現地で発掘してきたわけでは決してありません。
現地でCD店には行ったものの、これといっておもしろいものを見つけられなかった音源発掘のセンスが全くない私の上に、救世主のように降ってきた「名盤」。てか、私、バルカン音楽に対する予備知識がなさすぎました。何せクロアチアで一番有名だと言われるDINO DVORNIKさえ知らなかったわけですから。(なんか、よりによって旅から帰ってきてバルカン音楽に触れる機会が増え、嬉しいやら悲しいやら・・・)
というわけで、ナイスなタイミングでクロアチアものを出してくださったアオラに感謝!

で、このDARKOさんも、クロアチア出身の歌手としてはとても有名な方なのだそうですが、勿論私、知りませんでした。多分、ここを訪れてくださる方の殆どもご存知ないという前提で話を進めさせて頂きますよ。
関口義人さんのライナーを、まんま使わせていただきますが、DARKOはクロアチアの首都のザグレブに生まれ、詩人・歌手としてのみならず、俳優としても活躍する中年オジサンなのだそうです。まだ、6つの共和国からなるユーゴのうちの一共和国という位置づけだった80年代のクロアチアで、HAUSTORというロックバンドのボーカリストとして活躍していたのが最初で、シニカルで反体制的な姿勢、とにかくその存在から醸しだされる「悪(ワル)」の雰囲気で、高水準なユーゴの音楽界(共産国家の中では西側から音楽が入って気易い環境にあったから)でも、かなりの個性派・実力派だったようですよ。その後91年に(不自由な社会体制もあって、多分戦争もあって?)活動の拠点をパリに移したのだそう。しかし、そのパリでは不遇な時代を送ったそうです。その後、クロアチアのインディーズ・レーベルからソロを数枚出し、このCARGO ORKESTARとの活動となったそう。で、今回のアルバムがバンドとしては2枚目とのこと。

さてさて、反骨精神に満ちた「ワル」(「ちょいワル」ではなく、「真性のワル」by関口さん)であるRUNDEKさんが紡ぎだす音楽、いったいどんなものかと申し上げますと、CDジャケットにも記されていますし関口さんも言及されていますが、そのだみ声は、トム・ウェイツの声に似ていると。トム・ウェイツと言えば、爽やか系ウエスト・コーストサウンドを多数送り出したアサイラムレコードに所属していた歌手にも関わらず、ダミ声&場末の酒場?路地裏?の雰囲気を醸しだしていたミュージシャン。そう、確かにそのだみ声と、ジャケ裏に現れるタバコを加えた風貌・イメージは確かに似ているような気がします。
サウンドに関して言うと、ひと言で表現するのがとても難しい、抽斗の多いミュージシャンだなあというのが第一印象。曲の振り幅がとても大きい。
ただ、全体を通して言えるのは、とにかく拭い難い憂愁に彩られていること。
しかし、それは絶望的な憂愁ではなく、救いのない状況でも反骨精神を保ち続けている人のそれ、闇に向かってすっくと立ち上がろうと常に「闘っている」人のそれだと感じました。
ダークな今にも崩れ落ちそうな、心が今にもひび割れてしまいそうなサウンドに色付けをしているのは、インプロヴィゼーション色が強いヴァイオリンと、層の厚い音を聞かせてくれるホーン・セクション(トランペットとトロンボーン)。曲によってはピアノも大きくフィーチャーされています。
イントロがサズの爪弾きと、SE(列車の走り出す音、貨物列車が軋みながら到着する音、教会の鐘の音など)を奏で、ヘビーでジャジーな曲へと入っていく1曲目は、即興性が生きた秀曲。
笑われることを承知で書きますが、実は私は一回目にこのCDを通して聴いている最中、曲によっては元Stone Temple Pilotsのボーカリスト、スコット・ウェイランドのボーカルも頭に浮かびました。但し、スト・テン時代のグランジ色?の強いスコットの歌ではなく、ソロとしての彼の、デカダンでねちっこい色気を持った妖しげなボーカルの方です。イントロが、ギリシャのクレタ島の民謡でも想像してしまいそうな楽しげなギター音と波音のSEで始まるにも関わらず、すぐにダークなピアノ音が被さっていき、独特の退廃的な雰囲気を湛える2曲目なんかは、私がイメージするスコットのソロ曲に近いものです。
また、、ホーン、ヴァイオリンとウッドベース、ピアノ、アコギ(その他の弦楽器。多分4曲目ではサズも使われてる?)による層の厚い音が構築的な世界を築いている3曲目、4曲目などは、かつてのニューウェーブバンドの残滓(失礼!)たちが、その後築いてきた世界観にも似た、たおやかで幻想的な世界観を有しているように感じました。DARKOさんの歌声も、だみ声というよりは低音ながらもとても色気があるものとなっていて、またまた的外れを承知でいいますが、私はDavid Sylvianを想像しちゃったのよね。(私は、自分が気に入ったものに関して、それぞれリンクしている場所を必死に探し出し、互いを結び付けていく傾向があるので、「似ている」と言ってもあてになりません。あしからず。)但し、デビシルのようにナイーブで内省的で、常に自己を探求し続けている者の表現手段としての音楽ではなく、不条理をとりあえず乗り越えた者が、自己の達観した哲学と外部に対する憤りという相矛盾するふたつの感情を、自己完結的でなく外に向けて表現するための手段、それがDARKOのサウンドではないかと思いました。

他の曲も然り。
緻密に構築された面と即興的な面が何度も交錯し、独特の雰囲気とのりを湛えた秀逸な曲がこれでもかこれでもかと襲いかかってきます。

また歌われている言語は、一曲中でも、フランス語、英語、クロアチア語とめまぐるしく変化するものもあります。その点もとても興味深く思いました。まるでDARKOさんの遍歴の人生をそのまま表しているようですよね。

で、ここを訪れてくれる方々は、勿論、曲に民族的なフレーバーが加味されているかを気になさることと思います。ズバリ言うと、エスニカルな部分はかなり少ないと思います。
曲によっては素朴な中世の抒情詩風のものもあります(5曲目)。ちなみに7曲目のHighlanderなる曲は、タイトルに反し、スコットランド民謡とは関係ない気がします。(とてもドラマチックな曲ですが。むしろ3,4曲目のようなニューウェーブ系サウンド?)9曲目は一聴して、明らかにヒターノ色があると思った曲。聞き違いかもしれませんが、歌詞の中にも「ツィガーネ(ロマ)」という表現が出てきたように思いました。(歌詞カードが入ってないんで確かめようがありません。)イントロや、その後も随所にバックで流れるSEには、ロマの集落での野外の饗宴を連想させるざわめきや手拍子、掛け声、犬の鳴き声なんかも聞こえてきます。間奏でフィーチャーされているアコーディオンも、その賑やかな演奏を盛り立てるのに一役買ってます。まあ、でも明らかにバルカンを感じさせてくれる曲はこれぐらいかもしれませんね。(あとは随所随所ケルティックなヴァイオリンの旋律が聴かれたりとか。サズが奏でるリフがオリエンタルな雰囲気だったりとか・・・)

おしまいに。私はこのCDに完全にはまってしまいました。DARKO RUNDEKが紡ぎだす少し退廃的なサウンド、「真性のワル(しつこいですが by関口さん)」が放出する色気、その憂愁さえもが、私の心を(良い意味で)ざわめかせてくれるのに必須の要素となっています。そして、その心地よいメランコリー感と、不良っぽさは、かつて自国で不自由を強いられ、戦争を体験し、移住を経験した者だからこそ「体現」できたものであることを、今夏かつてのユーゴの国の戦争の痕を見てきた私には、より強く感じることができたように思います。
西欧の風を持ち込み、新たな音世界を展開し始めたDARKOのもたらすサウンドを、サブ・タイトルと、一曲目の貨物列車の軋みが見事に表現しているようです。「バルカンとヨーロッパのボーダーからいわば、CARGO(貨物)として文化を持ち込んだこのオルケスターの新作(以下略)」という表現が、関口さんのライナーでも使われています。

さてさて、いろいろ語らずともこのCD、とにかくかっこいいし、哀愁があるし、燻し銀のような年季の入ったサウンドであると同時に、とても現代的。ジャズが好きな人も、ロックが好きな人も、特に、一筋縄では行かない「ワル」が生み出すアクの強い世界観がお好みの方は、必ずや気に入られることと思います。
これを機に、私もバルカン音楽掘り下げなきゃ・・・ね。

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内 容 ニックネーム/日時
「真性のワル」か…。男なら誰しもが一度は言われてみたい殺し文句ですよね(そんなこと無いすね)。ひさびさのellyさんによる音楽ネタ、相変わらず渋いところからのチョイスでシビレました。当然このDarko Rundek & Cargo Orkestarも初耳でして、哀愁のクロアチア歌謡を勉強することができました。トム・ウェイツにスコットにデビシルですか、あまり馴染みのない方々とはいえ、何となく頽廃した都会的ワルっぽい雰囲気だけはイメージできました。そう、これもellyさんの文才の成せるワザですよ。(ホメ返し!)
…いや、ほんとに音楽というジャンルだけに留まらず、時代背景や地理的事情、食や映画など他の文化とリンクさえながらの記事はタメになります。料理なんかできねえくせについ『ELLE』買いそうになりましたし(笑)…。
questao
URL
2006/08/19 08:20
すっかりお返事が遅くなってしまいました。いやいや、私がチョイスしたというより本当に「救世主」のように頭上に降ってきたのですよ。クロアチア音楽、これを機に掘り下げることが出来たらなと思います。あ、似てるって言ったVo.は、かなり恣意的ですよ〜。でも「退廃した都会的ワルっぽい雰囲気」を感じていただけたのなら良かったです!スコット・ウェイランドにデビシル、questaoさんは絶対聴かれないジャンルだよな、と、文章を書いている時、以前のquestaoさん・えひ山さんとのやり取りを思い出していました。それにしても、またまた過大な褒め言葉を頂き調子に乗ってしまいそうなellyです!いつもありがとうございます。
elly→questaoさん
2006/08/22 14:55

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