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zoom RSS <東京の夏>音楽祭2006 シャハラーム・ナーゼリー氏公演レポ・・・と言いたいところですが;

<<   作成日時 : 2006/07/31 20:21   >>

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長いタイトルになってしまいました。
今月5日から来月6日まで都内各所で行われている『東京の夏音楽祭2006』公演の目玉のひとつとも言える、世界的にも有名なイラン出身のクルド人音楽家シャハラーム・ナーゼリー氏の公演を、浜離宮ホールで聴いてきました。26日、27日と行われた2日間の公演のうち私が聴きに行ったのは2日目。噂によると、2日目の方が声の出や伸びが良かったということなので、ラッキーでした・・・が、実は鑑賞する側である私の方の体調がぼろぼろで、折角の公演、殆ど集中して聴くことが出来ず、公演中も具合が悪くて何回か席を立つという有様でした。なんとももったいない。本来なら詳細なレポを書きたい(書く能力があるかどうかは別として)ジャンルだし、とても楽しみにしていた公演だっただけに、未だにショックから立ち直れない私。
・・・と、落ち込んでいたところ、我がブログを通してお知り合いとなったネット上の友人(ずうずうしくてすみません)『えひためブログ』のえひ山さんが、民族楽器に対する豊富な知識を生かした素晴らしいレポを書かれていて、それを読ませていただくことにより、自分が聴き(見)逃していたいろんな事実を追体験、否、発見することができました。すばらしいレポなので、「ナーゼリー行けなかった〜」、という皆様、どうぞご一読ください。

さてさてこんな風にひどい体調だったにも関わらず、演奏中、目が釘付けになる瞬間が多々ありましたので、やっぱり何か書いておきたいなと思った次第です。レポと呼べるような体裁ではありませんが、お暇があるようでしたら、ご一読くださいね。

まずは、演目とパートを簡単にご紹介。
前半:ヤーレスターン(イラン北西部ケルマンシャーの一地方)の手法によるマカーム音楽
    1.「日没」 ゾルフィガールの詩による王書の逸話
    2.マジュヌーニー旋法 『ライラとマジュヌーン』より
    3.サハリー旋法 祈りの詩『シャー・ナーメ 英雄ロスタムの物語』より
後半 :1.ルーミー『精神的マスナヴィー』 『シャムセ・タブリーズィー』いずれも即興演奏
    2.クルド民俗音楽

出演
シャハラーム・ナーゼリー:歌・セタール
アリーレザー・フェイゼバシープール:タンブール・タール
アフガー・ナヴィード:トンバク 
ホセイン・レザーイーニアー:ドホール(『えひためブログ』より名前を拝借)・ダフ


ナーゼリー氏は、著しく音楽活動が制限されたイランの中で、古典文学に対する深い知識を元に、巧みな隠喩を音楽に取り入れ、宗教体制に反しない範囲で伝統音楽の演奏を行ってきました。スンニー派が多数のアラブ世界とは違い、シーア派王朝の支配が長かった(そして現在も勿論)イランでは、音楽が規制を受けたり弾圧されることも多かったのですが、ゆえに、ペルシアの古典詩に音楽を付けるという手法が、古典・伝統音楽の世界で発展してきたという事実があるようです。そんな伝統の中、公演前にあった説明によると、今のペルシア音楽の基礎が出来上がった150年前頃は、同じペルシアの詩人でもサアディーやハーフェズを取り上げるのが主流だったということですが、ナーゼリー氏は、13世紀のイスラーム神秘主義の詩人、ジェラールッディン・ルーミーの詩を音楽に取り入れました。ルーミーを取り上げたのは、ナーゼリー氏が最初だということです。このことは、イランの中でもナーゼリー氏の出身地であるケルマンシャーのクルド人地区でイスラーム神秘主義を奉じる人が多いことと無関係ではないでしょう。この事実に代表されるよう、演目はペルシア古典音楽の伝統とクルド民謡・文化の伝統が絶妙にミックスされた奥深く、洗練された、また新鮮なものだったのだと思います。
イラン人の民族的誇りである11世紀の英雄叙事詩『シャー・ナーメ(王書)』の中から、国民に最も人気がある英雄ロスタムの物語を取り上げ、それをクルド語のヴァージョンで歌い上げる。また、タンブールとダフというクルド的な楽器編成に加え、トンバク、タール、(出演は叶わなかったがCDでは)カマーンチェというペルシア古典音楽寄りの楽器をも用いる(パンフにあった『Ze Ami代表の近藤博隆さんの言葉を引用)というスタイル。タンブールとダフという組み合わせがクルド的だということは私には全く知識としてありませんでしたが、確かに(私の印象で)アラブ音楽に比べやや大人しく、リフレインの多いペルシア音楽の中で、時に荒々しく、重量感のあるダフの音が、ピリリッとスパイスを効かせていたように感じました。

神秘的なタンブールのソロから始まった『王書』の逸話。緩やかなタンブールのメロディーにナーゼリー氏の歌が重なって行きます。低音部から始まった氏の歌。その時点で、あれ、世界のナーゼリー、それほどでもないんじゃないの?なんて、な〜んにも知らない私は迂闊にも思ったのでした。低音部での声の出が思ったよりもか細く、安定していないように感じたのですよ。が、その声が徐々に昂揚し、高音部に達した瞬間、これでもかといわんばかりのタハリール唄法のオンパレードが!! 今まで、まさに鶯がさえずるような女性の声のタハリールしか聴いたことがなかったのですが、氏のテノールの美声であれをやられると、う〜ん、昇天。やられた〜って感じでしたよ。もう・・・。それに、えひ山さんも書かれていますが、とにかくタンブールの方の指の動きがすごいのですよ。楽器の作りについては私は殆どわからないのですが(楽器についてはえひ山さんのブログを読んでね)、下からドロロ〜ン?と弦を掻きあげるその指の動きがなんともいやらしく、かつテクニカルなんです!イラン人(クルド人も多分)て、リーチがある人が多く、ゆえに指も細くて長い人が多いので、棹の長いタンブールを手にすると、ほんとかっこいいですよね。まあ、かっこいいかどうかは別としても、あの長い指があってこそのテクニックだわと、具合悪くて吐きそうになりながらも(失礼!)うっとりと指先を見つめてしまったのでした。それにしても、ナーゼリー氏の歌との合阿吽の呼吸が素晴らしかったですね。歌に続き絶妙のリフレインを奏でたり、はたまた歌を先導してメロを取ったり・・・この繰り返しフレーズを無心で聴けていたならば、きっとトランスできていたことでしょう。
また、公演をご覧になられた方数人が口をそろえておっしゃってたことのひとつが、パーカッション陣のふたりの超絶テクにやられたという意見。私も勿論そのひとりですが。
ドホール(えひ山さんのブログよりお名前拝借)という大太鼓状の楽器。この楽器は名前も知らなかったし、聴いたのも見たのも初めてでしたが、傘の柄のような形状の撥と、木の枝のような形状の撥の2本を用いて演奏されていました。とても古い楽器(世界の楽器の祖先)のひとつなのだろうなと想像しました。このドホールなるものを演奏されている方が、演奏途中何度もダフに持ち替え演奏を行うのですが、このダフは素晴らしかったですね〜。楽器ひとつで文字通り高低・強弱あらゆる音を出しちゃうんですもの。ダフおなじみのザッザと引きずるような音から、心地よい揺らぎのある波のような音まで、様々に「聴かせて」くれました。こういうマルチな楽器とテクニカルなプレーヤーの演奏を聴いた後では、西洋の音楽が「お子様」のものに聞こえちゃったりします。世界の音楽の祖先であるペルシア音楽の底力、しかと見せてもらったぞという気分。ダフの演奏はソロ・パートも多くありましたが、拍手喝采の嵐でした。私もず〜っと聴いていたい気分でしたもの。低音部では、胃に響いて多少気持ち悪かったですが。『王書』には、クルド語のヴァージョンは知りませんが、独特のリズムがあります。何が一番近いだろうと考えると、それはきっとマーチに近いリズム。言葉で表すと、タタン、タン。タタン、タンの繰り返し。詩を唱えていると、自ずと英雄たちの繰り広げる戦争や冒険の物語の中へと引きずりこまれて行くようなリズムで出来上がっているのですが、この日繰り広げられたクルド語の王書の世界にも、やはり独特の「英雄的」リズムがありました。その勇猛果敢なリズムの多くは、このダフにより刻まれていたように感じます。トンバクの演奏もこれまた、すごかったです。トンバクは左手で銅の部分を抱えて、正面に革張りの部分を見せる形で右手で演奏していましたが(楽器の説明はえひ山さんのブログを見てね)、太鼓の表面を斜めに指をススス〜っと滑らせることにより、これまた聴いたこともないような、打楽器から出されているとは俄かに信じがたいような音を聴かせてくれるのです。トンバクの演奏って、前にも一度観たことあったけど、こんな奏法してたかな?もう目から鱗の連続です。
後半、ナーゼリー氏は、セタールを持って、タンブール奏者は、タールを持って登場。このタールという弦楽器、実に不思議な形状をしています。木を丸ごと繰り抜いたような8の字型(瓢箪型?)の重々しい胴体。これまた棹がとても長い。このごつい胴体と長い足?腕?から、実に複雑な微分音が繰り出されます。それはもう、この胴体からは想像もできなかった繊細な音。

楽曲自体は、個人的に前半部の後ろのあたりから後半部にかけてが楽しめました。英雄叙事詩を詠むという性格上(的外れかもしれませんが琵琶法師の奏でる『平家物語』を想像してください)、やや単調になりがちに思えた前半のメロディー展開に比べ、実に妖艶であり同時に儚さをも感じさせる雰囲気を持つ神秘主義文学の粋、『ライラとマジュヌーン』を扱った後半部からは、より華麗で神秘的な、そして本当に個人的な印象ですが、より構築されたメロディーの流れを感じることができたように思います。でも、実はプログラム後半の方が即興演奏だったの?うひゃひゃ!
あ、で気になったのが、アンコールで演奏された曲。私もなんとな〜く耳にしたことがある気もするのですが、この曲でイラン人のお客さん方が盛り上がっていたように見えました。イラン人におなじみの曲なのかな?ご存知の方がいらしたら、教えてくださいね。

*今回は、文学・音楽用語などに関して、注を付けていません。できる限り、ウイキペディアなどにリンクを貼るようにはしたのですが、かなり恣意的です。ちょっとおさぼりモードが入った記事となりました点、お許しくださいね。
また、Ze Amiさんのサイトで近藤さんが、イランの古典音楽全般、また、ペルシア文学との関連でもとても充実したコラムを書かれていますので、ご興味がある方はぜひ!

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嵐 - アオゾラペダル
2006/07/31 22:24

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
ギャーーーーーーこれ行きたかったのに完全に忘れていました!!ショック〜〜・・・
体調はもう大丈夫ですか・・・?
せ骨
2006/08/01 07:53
 うわっっ!そんな、大したことも書いて無いのに何度も文中でリンクしてくださって恐縮至極です><

 みなさま、イラン音楽のバックグランドから語るこのellyさんの大ボリューム記事のほうが数十倍ためになるのは間違いありません!(楽器のこともしっかり書いてあるし!!)

#あ、ちなみに2日目後半の1曲目はZeAmi近藤さんのリクエストにより実現したそうです。ラッキーでしたね〜^^
えひ山
2006/08/01 20:33
きゃ〜!せ骨さんだ!
そうか、せ骨さんも行きたかったのですね。
ひとことお誘いしてみれば良かったです。
体調不良はいいのか悪いのか、この日オンリーでした。ご心配ありがとうございます。
elly→せ骨さん
2006/08/01 21:26
またまた勝手なことをしてしまってすみません。事後報告ですが、記事中リンクさせていただきました(笑)。いや、えひ山さんの記事はやはり楽器に対する知識が前提となっているので、よりライヴ感のある、音が見える記事になっていると思うのですよ。文化面に関してはちょっと調べれば誰でも分かるというか。実際に聴けなかった人には、えひ山さんのような記事がとても役に立つと思ったので、ご紹介させていただきやした!
後半1曲目、例の「カーブーキー」というナーゼリーさんソロの曲ですね。そういう事情があったんですね〜。なるほど!近藤さん、どうもありがとうございます。
elly→えひ山さん
2006/08/01 21:31

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