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zoom RSS 世界の路地〜シディ・ブ・サイド(チュニジア)編〜

<<   作成日時 : 2006/05/18 19:18   >>

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画像碧い空に青い海、白壁に映える蒼い幾何学文様の鋲打ちドア、様々な種類のブルーが、軽いグラデーションを描く青の街。イスラームの街には様々な「青」があるけれど、チュニジアン・ブルーと言って真っ先に思い浮かぶのがここ、シディ・ブ・サイド(سيدي بو سعيد)である。この街では空と海と街並みの青がリズミカルに競演する。

この魅惑的で小さな街は、チュ二ジア北部、歴史的に有名なカルタゴの街のすぐ近くに存在する。
街自体はかなり小規模だ。ゆっくり歩いて周っても半日もかからない。
だけど、この街には地中海の全てがある、と言っても過言ではない。
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「青の競演」に続くのは、何種類もの絵の具をばら撒いたような色鮮やかな地中海の花々。土産物屋の軒先に吊るされた、シディ・ブ・サイドの名産品である繊細な細工の鳥籠。頭上を見上げると、その鳥籠とそっくりのデザインの青い窓枠が散見される。
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シディ・ブ・サイドの色の共演は、多くの芸術家や文筆家たちを魅了してきた。
古くはドン・キホーテの作者、セルバンテス(カルロス5世の治世、守備隊として駐屯)がこの地を訪れ、フランスによる植民地の時代には、バウハウスの教師も勤めた画家パウル・クレー、実存主義の作家であり、サルトルの妻でもあったボーヴォワール、それからアンドレ・ジイドもこの街に滞在した。クレーはわずか2週間のチュニジア滞在で開眼し、数多くのポリフォニックで音楽的な作品を残した。今にも音楽が聞こえてきそうな、色彩溢れる彼の描いた絵には、ここシディ・ブ・サイド滞在の経験も生かされているに違いない。そう、色は時に「耳には聞こえない」音も伴うのだと、彼の絵は教えてくれる。
そして、心理学者のユングもまたチュニジアに魅せられたひとりである。


そして、街には芸術家ならずとも魅了されるステキなカフェが存在する。
青枠が施された白壁を眺めながら階段をのぼり、正面を見ると馬蹄型のアーチが待ち構え、緑と赤で装飾されたマグレブ風の店内へと誘ってくれる。
松の実を浮かべたミント・ティーを飲みながら、話に興じる若者や旅行者たち。水タバコを吹かしながら、ひとり気ままに午後の時間を過ごすご老人。
ふと、鳥のさえずりが聞こえてくる。
店内を見回すと、薄暗いカフェの片隅に、例の青い鳥籠が設えられ、小さな鳥がさえずっていた。

そのカフェを出て思いのままにふらふらと歩いてみる。
様々な人が声を掛けてくる。
ロマンチックなシディ・ブ・サイドは、チュニジアの若者にとっても人気のデートスポットだ。
首都のチュニスからも電車で30分ほど。チュニスの大学に通うカップルが声を掛けてきたかと思うと、観光客をねらっているらしい「ビーチ・ボーイ」が、そして、メインストリートにところ狭しと並ぶ土産物屋が、次から次に声を掛けてくる。

シディ・ブ・サイドの駅を出て、延々と続く坂道をのぼり切ったところにあるこの街は、海岸よりそうとう高台にある。
澄んだ地中海の青を俯瞰できるスポットはいくつもあれど、カフェ・シディ・シャバーンに適う「空中写真」を提供してくれるところはない。
断崖に位置するこのカフェからの眺望は、まさに地中海を独り占めした気分。
ベンチも壁も全てが白いこのカフェの唯一の装飾は、海の青と空の青。
なんて贅沢なのだろう!
眼下の港や海岸から微かに漂ってくる潮の香りと、ミント・ティーの爽やかな香り、そしてジャスミンのむせる様に甘い薫りをひとつひとつ丁寧に味わいながら、夢のような時間を過ごそうではないか!
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カフェを出て、もと来た道を戻っていく。

メインストリートを外れ、気ままに路地を巡っていく。
細い坂道をのぼっていくと、薄暗い場所に、聖者アブ・サイド(シディ・ブ・サイド)の霊廟がひっそりと存在していた。
聖者信仰が盛んな北アフリカには、多くの聖者廟が存在する。
そして、その聖者にちなんだ名前が街に付けられている。
シディはアラビア語で聖者に対して使う尊称。
ゆえに、チュニジアやモロッコには「シディ〜」と、聖者の名前を冠した街が多く存在するのだ。
聖者に守られた彩り豊かな空間。
そして、人懐っこい人々。これ以上この街に何が必要だろう!


人通りが少ない住宅街に入っていくと、漆喰が剥がれ落ち、レンガが露に肌を見せている廃墟が現れた。私がカメラを向けると、それまでそこにいた野良猫が、急いで走り去っていった。
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コメント(11件)

内 容 ニックネーム/日時
なんだか自分も歩いてるような気になりました。言葉の力ですね♪町の雰囲気が伝わってきますよ。私、坂も廃墟もすっごい大好きなんですけど、最後の写真が特に良いですね。今すぐそこに行きたいです(笑)ここって、うろうろさまよっても大丈夫なんですか?治安とかどうなんでしょう。
ラクダ子
2006/05/19 03:39
ellyさんがこの街で感じた空気感や海と空の色などが臨場感たっぷりに語られ、旅情を誘います。涙がでそうに地中海の海が恋しいです。
チュニジア(シディ・ブ・サイド)の風景はギリシャの島を彷彿とさせますね。華やかなブーゲンビリアやハイビスカスが青と白を彩る・・
そして溢れるような光・・。懐かしいです。
興味深いのは、クレーがこの街で開眼し、音楽的作品を制作したということ。そう、光の中で輝く明確な色彩にはリズムがある・・私もそう思います。また文筆家たちの心を捉えたというのもわかります。安らぎとインスピレーションとなる力を併せ持っているのでしょうね。
それから繊細な細工の鳥籠は伝統工芸なのですね。窓枠にも同じデザインが見られるのも素敵。この街ではカフェでミントティーなんですね!ギリシャの甘いコーヒーと違い、何だかとても爽やかな印象です。
文章と写真、堪能しました。次回も楽しみにしています!
さらさ
2006/05/19 13:59
街を歩いている雰囲気を味わって頂けたなんて、そんな嬉しいお言葉は他にありません。
坂と廃墟、私も大好きなんです。やはりラクダ子さんと同じだ!
シリーズの中で、遺跡に残る路地(チュニジア編)もやろうかと思っていますので、もしよろしければ読んでくださいね。
チュニジアは、シディ・ブ・サイドに限らず、治安はとても良いです。わりと豊かな国ですから、がつがつしているところもなく、人も総じて穏やかですし。2002年に一度観光客をねらったテロがリゾート地であったかとは思うのですが、正直、イスラーム世界でリゾート地や西洋人が多く集まる地域に限って言えば、どこも安全だとは言えないと思います。でも、そういったことを除けば、旅行者として最低限の注意事項を守っていれば、道を歩いていて危なさを感じるといったことは、まずないです。
elly→ラクダ子さん
2006/05/20 15:56
「地中海」、そう聞いただけで切なくなりますよね。その、ある種心地よい切なさは、私の方こそいつも『地球散歩』を訪れる際に頂いているものですよ。
チュニジアの街並み、特にこのシディ・ブ・サイドは、確かにギリシアを思い出させるところがたくさんあるかと思います。地中海のあの青い空と溢れるような光線には、やはり白壁と咲き乱れる原色の花々がお似合いですよね。
クレーは、実は長い間(おそらく中学校くらいから)私が最も好きな画家なんです。彼の絵から溢れ出す色彩を思い浮かべながら、そして、自分の歩みに彼の絵のリズムを感じながら、そして、何よりクレーもこの地を訪れたんだよなあと思いながら美しい街並みを気ままに歩くのは、本当に感動的でした。さらささんも同じようにギリシアの路地をワクワクしながら、同時に深い安らぎを感じながら巡られていたのでしょうね!(続く)
elly→さらささん
2006/05/20 16:10
カフェにはミントティー以外にも様々な飲み物がありますが、マグレブではやはりあま〜いミントティーがポピュラーです。薫りは爽やかなのですが、口にするととてつもなくあまい!でも、北アフリカの風土にはあれが合ってるんだよなあと思います。ギリシアのコーヒーも大好きです!
また路地の記事、近いうちUPしますね!丁寧に読んでいただいて本当にありがとうございます。
elly→さらささん
2006/05/20 16:11
おお、これがうわさの路地ですね。
引き込まれる文章で、再度読み返してしまいました。お世辞でなく、本当に文才あると
思います!チュニジアで海の贅沢を満喫しながら
カフェでまったり・・したいです、私も!
たくさんの人を魅了するところってそれなりの
理由があるんですよね。

最後の廃墟のちょっと寂れた感じの
壁の崩れ・道凸凹、なんだか
ルーマニアに共通するものを感じたりしました・笑

★お店のサービス、ダリエは本当に◎◎。
そうですね、現地もだいぶ改善されてきたと
思います。レストランでは確かにあまり問題
ないかな、お店(販売店)はまだまだ
改善の余地がいっぱいあるところがありますが。

go2rumania
URL
2006/05/22 23:39
「噂の路地」(笑)!
なんて嬉しいことをおっしゃられるのでしょう!小さい頃から本を読むことと文章を書くことが大好きだった私には(その割にはけっこう用語法を間違ってたりしますが・苦笑)この上なく嬉しいお言葉の数々です。2度も読んでいただけたなんて、この記事書いた甲斐があったってものです。
廃墟や放置された道路のでこぼこなど、ルーマニアを彷彿とさせる写真かもしれませんね。ルーマニアとチュニジア、どちらが西洋の国に近い感覚・文化かというと、実はチュニジアだという印象が私にはあるので、そのあたりもおもしろいところですが。路地を通して比較文化を試みるのもおもしろそうですね。
ところで、ルーマニアの「何でも屋」には本当にビックリです。でも販売店にしろレストランにしろ、感じの悪い人や騙そうとかかっている人が殆どいなかったのが何よりでした。「人」はルーマニアの財産ですね。
elly→go2rumaniaさん
2006/05/23 21:36
ellyさんはクレーに長いこと惹かれていらっしゃるんですね。自分の大好きな画家が滞在した地を彼の作風をイメージしながら歩くというのは感動的だと思います。
私は時期によって様々な画家に影響を受け、この場所のこの作品の前でずっと佇んでいたなどというものが沢山あります。最も好きな画家・・選ぶのが難しいけどボッティチェリかな・・。今、来ているプラド美術館のムリーリョも大好きです。
絵画の話でふと思い出しました。すっかり話が途中になって・・。長谷川潔展にいかなかったけれど、庭園美術館の宇治山哲平展、近代美術館の藤田嗣治展、横浜美術館のイサム・ノグチ展などに行く機会がありました。根津美術館の「燕子花図屏風」が今、見たいです。
それからミントティーのことですが、甘いのですね!意外な気がしましたが、北アフリカの地にあっているというコメントに納得しました。

さらさ
2006/05/24 23:14
再び戻ってきてくださり、ありがとうございます!
クレー好きに関しては、子どもの時は気付いてませんでしたが、あのリズムやポリフォニーが私を誘っていたのだと、今ははっきり言える気がします。そして、クレーが好きだった地に自然と惹かれたのも、やはり一種のリンクみたいなものだったのだろうなと…。
さらささん、この春はたくさん展覧会に行かれたようで良かったですね!
宇治山哲平さんの絵って、どんなものかピンと来なかったので、今ネットで調べてみました。
初めて見ました。ポップで音楽性もあり好きな画風かも知れません。
ボッティチェリがお好きとのこと、とてもさらささんらしいなと思いました。(お会いしたこともないのにこういうことを言うのは変ですか?)ああ、芸術を堪能しにイタリアやフランスも訪れたいですね!
プラド美術館展ですが、結局まだ行けてないままです。早く行かないと終わってしまいますね。
あまいミントティーは、疲れた身体には妙に効くんですよね。砂漠のナツメヤシと同じように、甘さの中に即効的な疲れ取り効果があるのでしょうか。
elly→さらささん
2006/05/25 21:25
私も宇治山哲平は初めてでした。日本画のカンディンスキーみたい。本当にポップで音楽性がありました。明るい色彩を使いながらも日本画独特の渋みを帯びているのも良かったです。また庭園美術館のアールデコの室内装飾がまた格別で・・。やはり美術館はいいですよね。
ボッティチェリが私の雰囲気なら、やはりクレーはellyさんらしいです。まだお会いしたことがありませんが、いろいろなことをお話ししていますから!
プラドはellyさんなら、まだこれからマドリッドへ行く機会もあることでしょうから日本で見なくてもとも思いますよ。やはり現地でみるのが一番です。日本に来ていない名画もたくさんあるのでは・・。ベラスケスやゴヤなど目白押しでしたし、別館にはピカソのゲルニカがありました。
甘いお茶の話はaoiの記事とリンクですね!
さらさ
2006/05/30 13:45
そうそう、カンディンスキーみたいだなと思いました。その色彩とリズム溢れる中に、日本独特の渋みがあるというのはいいですね。そして庭園美術館はその空間自体が芸術ですよね。室内もさながら、やはり自然に囲まれた空間というのは格別。自然に勝る芸術はないなあと、ああいう自然が美しい空間に行くと感じさせられます。
プラドは、そうですね。実は以前スペインへ行った時は都合でマドリッド滞在が出来ず、素通りしてしまったのでした。今後いつ行けるかはわかりませんけれど、ぜひ本場で名画の数々を観てみたいものです。
クレー、そうですか!なんだか嬉しいです。ほんと、さらささんもaoiさんもお会いしたことがないというのが信じられないくらいの気分です。
そうそう、お茶の話、今回のものがリンクしていることには、さらささんがおっしゃるまで実は気付いていませんでした!以前書いた記事に関してはトラバさせていただいてたのですが。
記事でリンクできると素直に嬉しいです。
elly→さらささん
2006/05/30 23:18

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